パロ詰め合わせ2
イギリスは膝の上に置いた仔猫に不安げな視線を向けたまま、じっと黙りこんでしまう。ポテトをすべて食べきってアメリカを見あげると、バーガーにかぶりつきテレビを見ているふりをしながらちらちらとイギリスのようすをうかがっていた。憔悴しているイギリスを心配しているのならそれ相応の態度をとればいいのに、人間というのは複雑な生き物だ。
口元に毛についた油をぺろりと舐めて拭いとり、ひょいとアメリカの膝の上に飛び乗る。そしてタオルケットの中を覗き込むと、よわよわしい呼吸を繰り返して仔猫が眠っていた。哺乳瓶と間違えているのかイギリスの小指をちゅうちゅう吸っている。夢の中でミルクでも飲んでいるのだろうか。
前足をイギリスの膝の上にかけ、タオルケットにあごを乗せる。ちらりと上を見あげると、不安そうながらも柔らかい笑みを浮かべて仔猫を見つめるイギリスがいて、なんだかひどく温かい気持ちになった。
ここに引き取られたとき、アメリカもおなじような顔をしてくれていたっけ。自分のことを思い出して幸せな気分に浸りながらくわりとあくびをすると、すかさずおおきなてのひらで背中を撫でられる。慣れたアメリカの手つきに、うとうととまぶたが落ちてきた。
うとうとしていたのはどれくらいの時間だったのか、ふと眼を覚ますと部屋の中には夕日の色が差し込んでいた。
ふいと顔をあげてタオルケットの中を覗き込むと、イギリスの指からくちを離した仔猫がくうくうとやわらかい、安定した寝息を漏らしている。もう体調はすっかり良いようだ。イギリスもきっと喜んでいることだろうと顔をあげてイギリスを見ると、彼はアメリカの肩に頭を乗せるようにして眠っていた。
タオルケットの中の仔猫とイギリスの顔を見比べる。ほんのすこしくちを開いて眠っている姿がそっくりで、なんだか微笑ましい。
自分が眠っているときも実はアメリカと似ているのだろうか。なんとなく気になってアメリカの方へと視線を向けてみると、彼はじっとイギリスのことを見つめていた。
こちらの視線に気づき、ふとアメリカと眼が合う。彼はにこりと笑って立てた人差し指を唇に押し当てた。そしてちいさな声で、
「声を出しちゃダメだぞ。動くのもダメだからね」
「にゃーう」
控えめに答えるとどうじにしっぽが上下に動いてしまったが、身体はアメリカの膝の上にあるから問題ないだろう。かふりとあくびをしてぱたぱたとしっぽを振りながら、ぼんやりとアメリカを見つめる。
こちらから視線を外したアメリカは、なんだか嬉しそうな顔をしてイギリスの顔を見つめていた。そしてうろうろと視線を泳がし、意を決したような真剣な表情をしてアメリカよりも細い肩に腕を回す。
たったそれだけのことしただけで重大な任務をやり遂げたような顔をしたアメリカは、こちらを見てニッと笑った。
「ど、どうだい相棒。恋人同士みたいだろう」
得意げな表情とは裏腹に、声はかなりちいさい。
そんなこと言う前にちゃんと告白しろ。呟いてもどうせアメリカには届かないのでかふりとあくびをしてイギリスの膝の上に頭を乗せて眼を閉じた。
人間っていうのは、ほんとうに不思議だ。