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別世界へ

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泣き声が聞こえる。
様々な声が、全て泣き声をあげている。

ネクがゆっくりと目を開けると、大勢の人間が泣いている。


(ああ…悲しんでいるのか)


何故なのか、何故泣いているのか、ネクはわからない。


(ここは…病院?)


ネクは病院のソファに、力無くもたれ掛かっていた。
自分でも顔が腫れているのがわかる。

顔をあげると、見覚えのある顔がたくさんあった。
ギシ、とソファが音をたてると、見覚えのある顔たちが、クラスメイトたちがネクを見た。


「あ…桜庭くん」

「桜庭くんって…リツの事故見ちゃったんだよね…?」



リツの事故。


リツの事故?


「リツ…の?」

「うん、リツが…。桜庭くん、事故見ちゃったから居るんだよね?
リツと学校で話してるの見たこと無いから…リツの事、よく知らないよね」


ネクの耳が反応する。

リツの事を知らないのはお前たちだ。リツはいつも悩んでる。
だから俺はいつもリツと話をする。
リツが俺を必要とするから、俺にもリツが必要だから。
だから、今日も……いつもの場所で待ち合わせをして…。


「いつもの……場所で…?」

「桜庭くん?」


ネクの脳裏に全てがよみがえる。
砂嵐にまみれた事故のビジョンが、途切れ途切れに再生される。

雨、スニーカー、血にまみれたスクランブル、人だかり。


「リツは…リツはっ…」


ネクに話しかけていたクラスメイトが近付いてきた。


「リツは…」

「桜庭…くん?」

「俺のせいだ…」


クラスメイトはぎょっとする。


「いつもの場所で待ってるって…!約束なんて…あんな事…言わなかったら…」


クラスメイトは再び驚く。
まさかネクがリツと友人関係を持っているなど思いもしなかったからだ。

ネクが、自分の右手が頑なに閉じられているのに気づく。
自分の右手なのに、自分の意志で全く動かせない。
肩の力を弱めて、自分の左手で、右手の指を一本、一本、広げていった。


赤い染みがついた、傷だらけのバッジが、右手に握られていた。
自らの右手にも、かすれた赤が残っていた。


ネクは全てを悟る。


「俺が殺したんだ……!」

「…桜庭くん……?」


「リツは…俺が…」






「う…あああ…っ…ああああ…」














(世界は俺1人だけでいい)



(もう 疲れたんだ)
作品名:別世界へ 作家名:淳介