踊れ吾が星
地平線と、溶ける空と海だけだ。ステラの、息の音しか聞こえない。
「ステラはきらきらしてンなあ!」
後ろに倒れ込みそうになった手を引っ張り上げて、笑いながら叫んだら、音も全てどこかへ吸いこまれた。
びく、と肩を震わせて、その後だんだん意味がわかってきたように、ステラの顔がほどけていく。
星が出るのを、じっと待つときみたいに。
きらきら光ってやまない、僕の星だ。
馬鹿みてえ。
僕はもう一度笑う。
時折こうして、無性におかしなことを考えてみたくなる。
「アウル、アウルだって」
子どもみたいにステラが笑ってた。
でも、僕だけじゃない、こいつが子どもじゃないってこと知ってるよ。
「アウルだってきらきら、してる!」
叫ぶときにわざわざ力を入れたかったのか、立ち止まって両手を握りしめながら言うもんだから、そのくそ真面目な仕草がおかしくて、その身体を抱え上げた。
「そのままきらきらしてろよ」
ステラの身体が、太陽をそのまま背負ってる。逆光が眩しくて、顔さえ見えなくても、その体温を昔からずっと知っている。
「鳥みたい」
両手を左右に広げて、だからそのまま走ってやった。風が吹き付けて、ステラが連れ去られそうだ。
嗚呼、こうして僕は海に愛されてるけど。
ステラだってこうして空に愛されてる。
「星だぜ」
鳥じゃなくて、言い直したら、ステラが頭上からふうん、と言ってきた。また僕の真似しやがって、性懲りのない奴。
顔は見えないけど、幸せそうなのはわかるんだ。だって喜びの鼓動を叩きながら、その全身が震えてる。
「なら、きらきら、してましょう」
たとえば、僕らがここでいつまでも回り続けていることが、何か大切な意味を持つんだったら、それは空と海が愛し合っていると言うことだ。青と青が交じって、星と星が交じって、きらきらきらきら、飽きずにお互いを褒め称えながら、輝き続けてる。
「僕はステラが僕を好きだって、知ってンだ」
うん、と笑う音がした。
ステラも知ってるよ。
ステラも知ってるよ。
アウルはステラが好きです。
ステラもきらきらするアウルが。
大好きです。
全て抱きしめたかった。
僕は目を閉じたくない。
目を閉じないで、その光を見ていたいんだ。
まだ、光を見ていたいんだ。
「スティング呼ぶか?」
「ん、いっしょおどろう」
「バッカお前、スティングは躍らねえよ」
「でも、ひとりは嫌だ」
「なら手拍子してもらおうぜ、手拍子」
パン、パンってさ。僕とお前が、合わせて躍ればいいの。
両手を打ち合わせてみると、違うパターンのない嬉しそうな笑顔が返ってきた。
いいんだ、こいつは馬鹿かもしれないんだし、変な顔してても、ぶさいくだって、僕がいいって言うんだ。
「だから今は躍ろうぜ」
躍れ吾が星。
躍れ吾が星。
僕は今すごく気分がいいんだ。
だから、お前を愛してやるよ。