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イギリスがDTの話

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 これだけ聞いたらデートの約束じゃないみたいだ。実際、アメリカは自ら「デートしよう」と言い切ったくせに、頭の中にあったのは女の子とするそれじゃなくて、単純にイギリスと遊んでもらうときの流れと一緒だった。どこかに出かけたりふたりの時間を楽しむっていうより、イギリスに自分をつきあわせるだけの。そしてイギリスは小言を言いながらもつねに財布を出してくれていて、アメリカを甘やかしてくれる。いつものことだった。むしろそれ以外のやり方でイギリスを会ったことはなかった。でも明日は、 アメリカは考える。一応お財布を持って行こう。誰か紹介してくれよってお願いしようと思っていたというのもあるし、それからイギリスの武勇伝を冷やかしたいという気持ちもあった。こんなにかわいらしい顔をしてるくせに「遊んでる」なんて、その秘訣を教えて欲しい。アメリカの周りにもそうやって女の子の影が絶えない友人というのはいるにはいたが、その誰もがイギリスとは全然似ていなかった。彼らは社交的だし、大概何かのスポーツに打ち込んでいたり、若くして成功を収めていたりする。もしくはものすごく見目よろしかったりとか。イギリスはどちらかといえば内向的だし、スポーツは特別何かしているという話を聞いたこともなく、確かにかわいらしい顔をしているが、でもまゆげがまゆげだ。俺の方がかっこいいのにどうしてなのか疑問なんだぞ、というちょっとした対抗意識に似たものがあったのも否定できない。
 ふたりとも遅刻はしなかった。次の日の話だ。とは言っても、イギリスはアメリカが遅れてきたと思いこんでいる。アメリカは遅刻はしていないと思いつつ、口には出さない。五分前にその場にいたことはいたのだ。ただ顔を出さなかっただけで。
「……それ、すごいね」
 ようやく勇気が出て待ち合わせした地下鉄の出口へ近づきながら、アメリカは遅れてごめんよりも先にそう言った。イギリスは手にでかい花束を持っていた。それは当然デートという単語を使ったわけだから、まず間違いなく自分宛だ。そう思ってアメリカはこのまま帰ろうかどうしようか悩んで、顔を出せずにいたのだ。そして外れてくれればいい予想は的中して、イギリスは赤い顔をしつつも素っ気なさを装って、花束をアメリカに押しつけてきた。別にくれること自体はいいけど、これ今日一日どうしろっていうんだい。せめて夕方待ち合わせをすればよかった(余談だが、扱いに困ったアメリカのためにイギリスはあとになってエコバッグを買ってくれた)。最近はこういうのがはやりなんだろうか。なんていうか、時代錯誤だ。しかもイギリスの格好もそれに拍車をかけていた。どう見ても初めて袖を通した風・よそいきの格好に見えた。さすがにブラックタイでなかっただけよかったが。
 デートそのものは楽しかった。いつもの調子でアメリカはイギリスをからかってあれこれとおしゃべりして過ごしたし、前述の通り花束を入れるためのエコバッグを買ってもらって、イギリスは柄をアメリカに選ばせてくれた。あれこれ横から口出しはされたが。もちろん。それにしてもかたやスーツの男と、もう片方はラフなフーディーにデニムという取り合わせで、添え物は赤いばらの花束なんて周囲からどんな風に見えているのか知りたい。アメリカは思った。どう見たってそういう風にしか見えないはずだ。つまりアメリカのところの西部だったら、今でも入店を断られたりホテルの部屋を提供してもらえなかったりしてしまう方向で。サブウェイの地図が蛍光色で描かれたバッグの中に花束をしまい込んでしまうとだいぶ周囲からの目はましになったが、それでも相変わらずふたりが隣に並んで歩くのには不釣り合いな様子であることには代わりはなかった。
作品名:イギリスがDTの話 作家名:tksgi