その手に大空の輝きを 4
その手に大空の輝きを 《山本武編》
あんたをはじめて見かけたとき、『無理してんな』って思った。
けどそれ以上に強く、そばにいたいって思ってた。
なんでかな?ワケもないけど、そう思ったんだ。
* * * * * * * * * * * * * *
男はみないと散々ごねたシャマルに、なんとか手当を受けた獄寺だったが、傷は思ったよりも深く、安静が必要だった。しかし、獄寺はふらつく足取りで山本へ近づき、その肩をつかむ。
「おい、獄寺。無理すんなよ」
あわてて支えようとする山本の手をはらい、獄寺は低くつぶやく。
「・・・山本、頼むぞ」
「おう、まかせろ!」
「まかせろだぁ?う゛ぉぉぉい、言ってくれるじゃねぇか。
相手が誰かわかってて言ってんのかぁ?」
そう、ザンザスの<雨>の守護者は、ヴァリアー最強の剣士・スクアーロ。剣帝すら倒し、いくつもの流派をつぶしてきた男。しとしとと降り出した雨さえも、ぶつかり合う二人の剣士の気迫に押されて、はじかれている。
「・・・山本、気をつけて」
「おう!ツナ、心配すんなって」ニッと笑うと山本は歩き出した。
「では、<雨>の守護者、山本武 vs スペルビ・スクアーロ―――バトル開始」
<雨>の守護者、その対決の舞台は、廃村の広場だった。かつて人々の生活を潤していただろう泉を中心に円形に作られた広場。降り続く雨が、石畳に複雑な文様を描いていく。その広場の中央で、二人の剣士は静かに、しかし激しい気迫をこめて、睨み合う。
少しでも動けば切れそうな空気に、ツナヨシたちは息をころして見守っていた。
と、次の瞬間。『静』から『動』へ、二人が動いた。
「いくぜ!」山本は時雨金時を抜くと、スクアーロを果敢に攻め立てる。
鋼の刃がぶつかり合い、澄んだ音が静まり返った夜に響く。
「はっ、いちおう剣術は仕込まれたみたいだが、甘いぜっ!」
防御にまわっていたスクアーロは山本の打ち込みをはじくと、攻撃に転じた。
「アタッコ・ディ・スクアーロ(鮫衝撃)」
雨粒すら両断する鋭い剣戟が山本を襲う。
「・・・時雨蒼燕流、守式・弐ノ型『逆巻く雨』」
水を巻き上げ、スクアーロの攻撃を防いだ山本は、すぐさま反撃にでる。
「攻式・五ノ型『五月雨』」
山本の剣をうけ、ふきとぶスクアーロ。しかし、彼は山本の攻撃を受けたのではなく、自ら後ろへとび刀をかわしたのだった。完全に山本の太刀筋を読み切っている。
そして、驚き、硬直した一瞬の隙をとらえ、スクアーロの剣が山本を強襲する。
「ぐっ!」かろうじて致命傷は避けたものの、傷口は深く、鮮血がしたたりおちる。
「その剣筋、知っているぜぇ。時雨蒼燕流―――昔オレがぶっつぶした流派だ。師匠と弟子をなます斬りにしてやった。最後に奥義『秋雨』を見切ってな」
「そんな、山本っ!」
「ヤベェ」
山本の傷口から、じわり、じわりと血が流れる。絶望がツナヨシたちを浸食する。
「・・・しらねぇな。時雨蒼燕流は、天下無敵、完全無欠!」
山本はニッと不敵な笑みを浮かべると、居合いの構えから一気に間を詰める。
「バカが。『秋雨』は見切った。まっぷたつにしてやるぜ!」
凶悪な笑みを浮かべてスクアーロが剣を振りおろす。
「っ、山本!」
(・・・だから、心配すんなよ。ツナ)
あんたをはじめて見かけたとき、『無理してんな』って思った。
けどそれ以上に強く、そばにいたいって思ってた。
なんでかな?ワケもないけど、そう思ったんだ。
* * * * * * * * * * * * * *
男はみないと散々ごねたシャマルに、なんとか手当を受けた獄寺だったが、傷は思ったよりも深く、安静が必要だった。しかし、獄寺はふらつく足取りで山本へ近づき、その肩をつかむ。
「おい、獄寺。無理すんなよ」
あわてて支えようとする山本の手をはらい、獄寺は低くつぶやく。
「・・・山本、頼むぞ」
「おう、まかせろ!」
「まかせろだぁ?う゛ぉぉぉい、言ってくれるじゃねぇか。
相手が誰かわかってて言ってんのかぁ?」
そう、ザンザスの<雨>の守護者は、ヴァリアー最強の剣士・スクアーロ。剣帝すら倒し、いくつもの流派をつぶしてきた男。しとしとと降り出した雨さえも、ぶつかり合う二人の剣士の気迫に押されて、はじかれている。
「・・・山本、気をつけて」
「おう!ツナ、心配すんなって」ニッと笑うと山本は歩き出した。
「では、<雨>の守護者、山本武 vs スペルビ・スクアーロ―――バトル開始」
<雨>の守護者、その対決の舞台は、廃村の広場だった。かつて人々の生活を潤していただろう泉を中心に円形に作られた広場。降り続く雨が、石畳に複雑な文様を描いていく。その広場の中央で、二人の剣士は静かに、しかし激しい気迫をこめて、睨み合う。
少しでも動けば切れそうな空気に、ツナヨシたちは息をころして見守っていた。
と、次の瞬間。『静』から『動』へ、二人が動いた。
「いくぜ!」山本は時雨金時を抜くと、スクアーロを果敢に攻め立てる。
鋼の刃がぶつかり合い、澄んだ音が静まり返った夜に響く。
「はっ、いちおう剣術は仕込まれたみたいだが、甘いぜっ!」
防御にまわっていたスクアーロは山本の打ち込みをはじくと、攻撃に転じた。
「アタッコ・ディ・スクアーロ(鮫衝撃)」
雨粒すら両断する鋭い剣戟が山本を襲う。
「・・・時雨蒼燕流、守式・弐ノ型『逆巻く雨』」
水を巻き上げ、スクアーロの攻撃を防いだ山本は、すぐさま反撃にでる。
「攻式・五ノ型『五月雨』」
山本の剣をうけ、ふきとぶスクアーロ。しかし、彼は山本の攻撃を受けたのではなく、自ら後ろへとび刀をかわしたのだった。完全に山本の太刀筋を読み切っている。
そして、驚き、硬直した一瞬の隙をとらえ、スクアーロの剣が山本を強襲する。
「ぐっ!」かろうじて致命傷は避けたものの、傷口は深く、鮮血がしたたりおちる。
「その剣筋、知っているぜぇ。時雨蒼燕流―――昔オレがぶっつぶした流派だ。師匠と弟子をなます斬りにしてやった。最後に奥義『秋雨』を見切ってな」
「そんな、山本っ!」
「ヤベェ」
山本の傷口から、じわり、じわりと血が流れる。絶望がツナヨシたちを浸食する。
「・・・しらねぇな。時雨蒼燕流は、天下無敵、完全無欠!」
山本はニッと不敵な笑みを浮かべると、居合いの構えから一気に間を詰める。
「バカが。『秋雨』は見切った。まっぷたつにしてやるぜ!」
凶悪な笑みを浮かべてスクアーロが剣を振りおろす。
「っ、山本!」
(・・・だから、心配すんなよ。ツナ)
作品名:その手に大空の輝きを 4 作家名:きみこいし