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きみこいし
きみこいし
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その手に大空の輝きを 5

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その手に大空の輝きを 《沢田綱吉編》


その時、わたしの前に現れた『沢田綱吉』という人物は、彼から聞いていたよりも、
遙かに華奢で、繊細な少女だった。
この少女に、ボンゴレの、マフィアの業を背負わせる事を思うと、胸が痛む。
しかし、君は誰かのために涙をながし、一緒になって笑い、仲間を大切に想っている。
そんな君だからこそ。ザンザスを、ボンゴレを、託すことができる。
今ここに、わたしは確信する。
この先、幾千の悔恨と、幾億の自責の念を抱こうとも。
沢田綱吉――――君こそが、ボンゴレ・デーチモにふさわしい人物だと。


 * * * * * * * * * * * * * * * * *


「ザンザス!」めったに無いことながら、ツナヨシは怒りもあらわに叫ぶ。
「くははっはは!カスに用はねぇ・・・かっ消えろ!」
モスカの砲撃がツナヨシたちを襲う。ツナヨシをかばっていた獄寺たちだったが、爆風にはじかれ、バラバラにとばされてしまう。
「くっ、まずはモスカを止めないと」ツナヨシは立ち上がり意識を集中させると、その両手に炎を宿した。
「お前の相手は、わたしだ!」絶え間ない攻撃を続けるモスカへツナヨシがつっこむ。
「十代目!」
「ツナ!気をつけろ」
「二人ともランボをお願い。みんな安全な場所へ!」
(これ以上攻撃はさせない、一気にケリをつける!)
ツナヨシは瞬時にモスカの間合いに攻め入ると、死ぬ気の炎を解放する。銃弾をも溶かす絶対の炎が、モスカを引き裂く。ズシャッと音を立てモスカは崩れ落ち、沈黙した。
「強えー」
「まるで別人だぜ」
「一体どうなっているのだ」
驚く守護者たちの元に、リボーンとディーノが合流する。
「ふん、オレと死ぬ気の修行をしたんだぞ。このくらい当然だ。
おい、ツナ、そんなガラクタより」
「リボーン、わかってる。どういうつもりだ?ザンザス」
煙をあげるモスカを投げ捨て、ツナヨシはザンザスと対峙する。
――――これは、リング争奪戦に仕掛けられた罠だ。
ザンザスははじめから、リング争奪戦などする気はなかったのだ。ボンゴレリングも、敵対するツナヨシたちも、目障りな存在であるアルコバレーノやディーノたちも、すべてが一カ所に集まる。この争奪戦を利用して、もっとも効率よく、ボンゴレリングを手に入れ、ボスの座を確固たるものにするために、そのために、リング争奪戦を利用した。
「ちっ、どいつも役にたたねぇ、ドカスどもが。・・・・単純な話だ。ボンゴレに弱者はいらねぇ。ボンゴレは最強でなければならない。そのために邪魔な奴らは消す」
「だからって、仲間まで傷ついて!平気なのかっ」
「はっ、仲間?ちがうな。カスどもはオレを崇めてりゃいい。力こそがボンゴレのすべてだ!」
「・・・ちがう」
「はぁ?」
弱い者を切り捨てて、強いものだけが生き残る?傷つく仲間を捨てていく?
「ちがう。そんなの九代目が望んでたボンゴレじゃない!」


だってそうだ。
はじめて訪れたボンゴレ本部。あの人の優しい声がよみがえる。
『マフィア』という存在が、不安で、怖くて、震えていたわたしに九代目は教えてくれた。
「ツナヨシ。ボンゴレが、マフィアが怖いかね?」
「・・・はい」
「そうか。ツナヨシ、キミはボンゴレのはじまりを知っているかい?」
「はじまり、ですか?」
「そう、ボンゴレはね自警団だったんだよ。大切な人たちを守るために。ボンゴレプリーモは立ち上がった。形はずいぶんと変わってしまったかもしれないが、彼ら、初代ファミリーの想いは今も受け継がれている。ここに・・・わたしに、そして―――キミにも」
九代目はやさしく微笑むとツナヨシの額に手をあてる。死ぬ気の炎が額に灯る。炎が、あたたかい光がツナヨシに流れこむ。
(そう、私はあの時、九代目の覚悟、意志を受け取った。だから、だから!)
「・・・マフィアのボスなんて、ずっと、今まで迷ってたけど。ザンザス!あなたにボンゴレは渡さない!!・・・あなたに九代目のあとは継がせない」
「笑わせる!カスが。だが、どうする?大空のリングはオレの手にあるぞ」
「お待ちください、ザンザス様。リング争奪戦は我々チェルベッロが仕切ります。これ以上勝手をされますと、失格となりますが、よろしいですか?」
「うるせぇ!どのみち、大空のリング以外は無用だ。てめえらもかっ消す」
ザンザスの右手から憤怒の炎がほとばしる。闇夜に燃え上がる、その炎は、紅く、紅く。
彼の瞳のように、激しい怒りを帯びる。
「ザンザス!」
ツナヨシが飛び出し憤怒の炎をはじいて、間一髪チェルベッロへの直撃はさけられた。
「ザンザス・・・・だったら、わたしと闘え!わたしが負ければ、すべてあなたの好きにすればいい」
「おもしれぇ。手間がはぶける。俺が勝てば、お前のすべてをかっ消す。お前も、そいつらも、お前に関わるすべてをな」
まさしく、命をかけた戦い。仲間の命、支えてくれる人たち、そのすべてがツナヨシにかかっている。その重さに、ツナヨシから表情が消える。
「みんな、ごめん・・・」うつむくツナヨシに、嗤うザンザスだったが、次の瞬間ツナヨシはキッと顔をあげると、守護者たちに叫ぶ。
「みんなの命、わたしにください!」
その強い瞳に誰もがハッと息をのむ。ひきつけられる。
「十代目!」
「ツナ」
「極限まかせろ」
「くぴー」
「くふふ、さすがはボンゴレですね」
「気に入らないけどね」
仲間の思いをうけて、ツナヨシがザンザスに向きなおる。
ツナヨシの覚悟に、ザンザスの表情が怒りに染まる。
「いいだろう、ドカスが。けしずみにしてやる」
「ザンザス!あなたには負けない」
そして、互いのすべてをかけて、二人の闘いがはじまった。