その手に大空の輝きを 5
「――――ザンザス様の戦闘不能により、大空戦の勝者はサワダツナヨシ氏とします。よって、すべてのボンゴレリングはサワダ氏が獲得することとなります」
チェルベッロがリング争奪戦の終結を告げる。その声に、ザンザスを抱えるツナヨシに守護者たちが駆け寄る。
「十代目!やりましたね」
「ああ、極限見事だったぞ」
「・・・みんな」
ツナヨシを囲む守護者たちは満身創痍だったが、誰一人欠けてはいない。
「終わったな。よくやったぞ。ツナ」
「・・・リボーン」
涙ぐむツナヨシの頭をめずらしく家庭教師がなでる。
しかし、そんな無事を喜び合うツナヨシたちの元に歩み寄る人影があった。
「見事ボンゴレ十代目を継承したか」
「あなたたちは、評議会の・・・」
「ではボンゴレよ、最初の仕事だ。ザンザスたちを処分しなさい」
「なっ!」
「勝負はついたはずだ!」
驚くツナヨシ達にスクアーロが非常な理を告げる。
「ガキどもが、あめぇぜ」
「この世界じゃ当然の考えかもな」
「リボーン!」
「確かに内部に反乱分子をおいておくことは命とりだが」
「ディーノさんまで!」
だが、それだけじゃないな。あいつらこの闘いで、ツナヨシたちの武器やクセ、戦闘スタイル・・・他にもボンゴレの手の内をしっかり見てやがったからな。ついでに、ボンゴレ精鋭であるヴァリアーをつぶして戦力を削ぐ気でもあるんだろう。どうする、ツナ?
「ボンゴレよ、これがマフィアの世界だ」
評議会の非情な宣告に、ツナヨシは静かに顔をあげると、口をひらいた。
「・・・チェルベッロ、今いちどボンゴレリングの所有者の確認を」
「はい。<大空>戦、ザンザス様VSサワダ氏の対決は、サワダ氏の勝利となりました。よって、ボンゴレリングの正式な所持者は、サワダ氏とその守護者となります」
「じゃこれで、ボンゴレ十代目は・・・・」
「はい。サワダツナヨシ氏に確定しました」
「そうだ、ボンゴレ・デーチモ。ボスとしての仕事を済ませなさい。反乱分子の始末をつけるのだ!」
「・・・お断りします」
きっぱりと、不動の意志を秘めた瞳が見据える。
その静かな瞳に気圧されながらも、評議会の面々が反論する。
「なんだと?!」
「それを決めるのはあなたじゃない」
ツナヨシはザンザスをスクアーロにあずけると、彼らを背後に立ち上がり、評議会の面々に対峙する。
「あなた方の顔を立てて、このリング争奪戦はうけたけれど、これ以上みんなが傷つくことを、わたしは決して認めない。それを望むならば、たとえ評議会であろうとも
――――容赦しない」
ツナヨシの意志に呼応して、死ぬ気の炎があふれでる。それはまるで立ち上がる火柱のようだ。炎に照らされあたりが真昼のように明るく染まる。
「どこにこんな力が・・・」
呆然とツナヨシを見つめる守護者とヴァリアーたちに、リボーンが告げる。いささか自慢げな表情をうかべて。
「これがボンゴレの死ぬ気の炎だぞ」
「リボーンさん」
「ボンゴレボスが己の命をかけて闘う、その覚悟の炎。
それは、仲間を守るときにもっとも顕著に発揮される」
「仲間・・・」
「どうやらあいつはもうお前たちを仲間とみているらしいな」
(まったくたいした女だぞ)
見上げる彼らに炎が舞い落ちる。炎をのかけらが、彼らに触れる。それは灼きつくすのではなく、心に灯る暖かい光。
すべてをつつみこむ、大空の光だ。
(守るんだ。みんなを・・・大事な人たちを)
―――――その想いにボンゴレリングがこたえる。まばゆい光とともに、大空のリングが輝きを放つ。同時に、守護者のリングからも光があふれる。
「十代目!」
「ツナ!」
「ランボさんキラキラなんだもんね」
「極限にまかせろ!」
「くふふ、まったく仕方ないですねぇ」
「誰だろうと咬み殺す」
ふらつきながらも守護者たちはツナヨシを支え、評議会と対峙する。
「・・・・みんな」
仲間の、ファミリーの強い思いに支えられ、ツナヨシは力のすべてを解放する。神々しいほどの炎。これこそがボンゴレの象徴、死ぬ気の炎だった。
「くっ、これほどのものとは・・・」
「これ以上手を出すなら、オレも相手になるぞ」
加えて、最強の殺し屋がニヤリと愛用の銃をかまえる。
「リボーン・・・いいだろう。ボンゴレ十代目にまかせよう」
かくして、ここにボンゴレ・デーチモとその守護者たちが真に誕生した。
―――――ボンゴレファミリーの想いを継承して。
作品名:その手に大空の輝きを 5 作家名:きみこいし