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きみこいし
きみこいし
novelistID. 14439
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その手に大空の輝きを 5

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球の中心にいるザンザス、その指にはめられたリングからは鼓動を刻むように、炎が放出されている。炎の勢いを押しかえし、徐々にザンザスに近づくツナヨシだったが、その不規則な炎に違和感を覚える。
(おかしい。ボンゴレリングの力が制御できていない?)
『ザンザス!リングを外して。リングの力が暴走してる。このままじゃ・・・』
『だまれ!くははは!力だ、絶対的な力が流れ込む・・・・ん?ぐあっ!』
『ザンザス!』
ボンゴレリングから放たれていた光が闇に一転し、次の瞬間、炎がザンザスを引き裂いた。倒れるザンザスに駆けより支えるツナヨシ。困惑に表情を歪める二人に声が届く。
『・・・お前にリングを継承することはできない。ザンザス、その理由をお前は知ってしまったのだろう?』
『うるせぇ!黙れ、じじぃ』
『この声、まさか九代目?!』
ツナヨシの呼びかけに応えて、炎が人の形をとる。そこに現れたのは、まぎれもない九代目の姿。彼は哀しみを浮かべた瞳を若き二人のボンゴレ候補に向ける。
『ツナヨシ、ボンゴレリングには歴代ボスの意志が宿っているのだよ。今ここに在るわたしもボンゴレリングの意志・・・ザンザスよ、リングはおまえを拒んだ』
九代目は悲しげに目を伏せると、右手に死ぬ気の炎を灯す。そして炎が閃光を放つと、そこはイタリアの下町。貧しい身なりの親子が九代目と話しをしている所だった。子どもの燃えるような、血のような、紅い瞳。
(これは、九代目の過去の記憶。あの子はザンザス・・・)
そして次々と転換する光景の中ザンザスは成長し、ついに自分の『血筋』を知る。絶望と怒りにザンザスが吠える。
(ザンザス!)
まぼろしの中、必死に手をのばすツナヨシだったが、一瞬にして暗転し、三人はもとの世界。大空戦のバトルフィールドにもどってきていた。


「では、ザンザスは・・・」
――――九代目の実子ではない。ボンゴレ直系の血をひいてない。
真実を知り、呆然とするツナヨシ。
『ザンザスよ、すまない。だがわたしはお前を本当の息子のように思っていた』
「・・・うるせえ!気色の悪い無償の愛などいるか!オレが欲しいのはボンゴレボスの座だけだ。血筋がなんだ!『先代殺し』がボスの座につくなど、ありえねぇ!」
『それは違う・・・』
ふたたび九代目の炎が閃光を放つ。そして、あの日の九代目の記憶が再現される。
屋敷を走り九代目に駆け寄るツナヨシ。九代目の覚悟。こぼれるツナヨシの涙。
そして明らかになった『先代殺し』の真相。

『・・・すまない、ツナヨシ。君に汚名を着せてしまった』
「そんなこと、そんなのどうだっていい!それであなたが生きててくれれば。よかったんだ!」
叫ぶツナヨシと側に倒れるザンザスを見つめる九代目の姿が揺らぐ。
『わたしは、お前たちを誇りに思う。愛しい我が子どもたちよ。ボンゴレを頼んだよ』
「九代目・・・九代目っ!」
消えゆく姿をつかもうとツナヨシが必死に手をのばす。最後の炎の欠片をからくも手につかむが、しかし、ひらいた手のひらには静かに輝く大空のリングがあった。
ツナヨシはぎゅっとリングをにぎりしめ、顔をふせる。
「ザンザス・・・」
「カスが・・・同情すんな」
ツナヨシの顔を見て、ザンザスは吐き捨てる。
「ちがうよ!ザンザスが泣かないから。だから、だから、わたしが泣くんだ!」
そういってツナヨシはポロポロと涙を流していた。
(脆弱な。そういって切り捨ててきた存在が、なぜこんなにも強く、響く)
ツナヨシはザンザスを抱きしめると、彼の額の傷に、両の瞼にそっと口づけを落としていく。


『ザンザスが泣かないから、わたしが泣くんだ』
かつて、昔にも同じ言葉をきいたことがある。
薄れゆく意識に、浮かび上がる光景。
あれは屋敷の庭か。緑の葉に名も知らぬ白い花。
九代目の側によりそい庭を歩く小柄な娘。
――――物好きな。
とてもマフィアの屋敷とは思えぬ穏やかな光景を、ザンザスは屋根の上から見下ろしていた。そこに柱の影から二人に近寄る人影が見えた。その手には拳銃。
屋敷の内部に暗殺者が潜り込んでいたのだった。
瞬時に彼は屋根から飛び降り、庭に駆ける。
ふりかえる二人に突きつけられた銃口。響く銃声。
九代目を狙った銃弾は、奇しくもはずれ、側にいた小さな人影を襲う。
とっさに、相手をつきとばしたザンザスだったが、弾をよけきれずに肩口に被弾した。
暗殺者は即座に警備によって拘束されたが。
かわりに、あたたかいものが飛びついてきた。
それは、ザンザスの傷口を目にすると、ポロポロと涙を流す。
ああ、あの時から――――
「ツナヨシ・・・」体から力が抜けていく。
ザンザスは変わらぬ瞳を見つめながら、静かに目を閉じた。