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きみこいし
きみこいし
novelistID. 14439
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悪魔と踊れ 後編

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一見『魔法使いの杖』のようなフォルムに反して、実際には禍々しい威力を持つ、鉄と火薬の塊。パンツァーファウスト3。
対戦車兵器を構えた敵勢がずらりと並んでいたのだ。
素人でも手軽に扱えるように設計された(設計するなよ)この兵器は、弾道発射後ロケットブースターを展開させて標的に迫り、爆発する。
「ちっ」
さしものザンザスも、対戦車兵器の直撃などを食らってはひとたまりもない。憤怒の炎で迎撃したとしても、この近距離では爆発にまきこまれるだろう。ましてや、ツナヨシはハイパー死ぬ気モードが切れている。防御力はゼロに近い。
(いや、そもそも対戦車砲って人に向けて撃つものなのか・・・)
敵の無茶ぶりはいっそ感嘆に値するが、そうも言ってはいられない。
動きをとめたザンザスに敵勢は勝利を確信したのか、ゆっくりと、しかし警戒を解くことなく近づいてくる。

ザンザスが顔をしかめているのは、ツナヨシを担いでいるからだ。
いくら細身だといっても、人間一人を担いでいれば機動力も落ちる。加えてツナヨシを支えるために、片手をつぶしてしまっている。
ザンザス一人ならばいくらでも切り抜けられるのに。
「ザンザス、置いていって」
ツナヨシの囁きをこれまた見事に無視。
彼は空いた右手をかざすと、憤怒の炎を凝縮させていく。
より純度の高い炎で、発射される前に対戦車砲ごと瞬時に消し去るつもりだ。
「ふざけるなよ・・・」
黒い獣が怒りに唸り声をあげる。
護衛対象を捨てるなど論外。
『任務失敗』の文字はヴァリアーにはあり得ない。
仮にツナヨシに傷一つでもつけて帰ろうものなら、あのむかつく黒ずくめのアルコバレーノにネチネチと嫌みを言われることは必至。
その様を想像したのか、ザンザスの怒りのボルテージが上昇していく。それに共鳴して憤怒の炎はさらに密度を増し、凝縮されていく。真紅に黒炎が混ざり、彼の瞳と同じピジョン・ブラッド。
すなわち暗褐色の血の色へ。
「カスどもが、かっ消えろ・・・」
怒りの限界を振り切った一撃が放たれようとしたその瞬間、彼の先手を打つかのように、敵勢が背後から崩れ落ちた。続いて目のくらむような閃光と耳をつんざく爆発音。もうもうと土煙が舞い上がる。
闇夜を切り裂いた雷光にザンザスが呟いた。
「・・・来たか」
「え?」
ザンザスの声に答え、たちこめる土煙の中から現れたのは、見なれた黒い集団。
――――ボンゴレ独立暗殺部隊・ヴァリアーの幹部たちだった。

敵を吹き飛ばしたレヴィの電光を合図に、スクアーロが敵勢を斬りとばし特攻する。続いてベルのナイフが宙を舞い、吹きあがる血しぶきの中、ルッスーリアの拳と足が炸裂。鈍い音が響いたかと思えば、それらをさえぎるほどの悲鳴と怒号。マーモンの幻術が彼らを混乱の渦に突き落とした。
「ボス、遅くなりました」
「う゛ぉぉぉぉい、無事か!ボスさんよ」
「ししし。ツナヨシ、グロッキーじゃん」
「あら~この子たちぜんぜん手応えないわぁ~」
「ツナヨシ、これは高くつくよ」
容赦ない攻撃で敵を駆逐し、颯爽と登場したスクアーロ達に彼らのボスは一言。
「おせードカスが」
「なにぃ!この、クソボスが。だいたいてめーが適当な場所をいいやがるからなぁ・・・」
「そう、ボクの念写でこの場所をつかんだんだよ。
感謝してほしいね」
「なに、いばってんだよ。カルツォーネファミリーの本部なんて誰でも知ってんじゃん」
「まあまあ、ボスが無事でよかったじゃなぁ~い」
「うむ」
突如始まったヴァリアーおなじみの光景に、ツナヨシは思わず苦笑いを浮かべる。彼らの口ぶりからすると、どうやらザンザスはスクアーロ達を近くに配置していたようだ。
(こいつ、やっぱり最初からやる気だったのか・・・)
呆れもするが、助かったことも事実。
そのザンザスはスクアーロの説教にキレ、無造作に彼を殴り飛ばし、指示を出す。
「うるせーカスどもが、さっさとはじめろ」
「ちっ」
「仰せのままに」
「オーケー、ボス」
「んふふ、お持ち返りいるかしらぁ~」
「帰ったら、特別報酬振り込んどいてね」
まだ言い足りないのかスクアーロはしぶしぶと、レヴィは従順に、ベルは喜々として、ルッスーリアは意気揚々と(何に興奮しているかはあまり知りたくないが)、マーモンはいそいそと(ツナヨシの姿を確認して金になると確信したのだろう)、それぞれの獲物を手に散っていく。
瞬く間に、積み上げられる戦闘不能者の山。あたりは、みるみる制圧されていく。この分だと殲滅するまで一時間も要しないだろう。
「うわー相変わらずすごいな」
そんな感想をもらすツナヨシといえば、いまだザンザスの肩にかつぎ上げられたままだ。ドン・ボンゴレとしては、あまりにふがいない格好にじたばたともがく。
「ザンザス、降ろして。オレもでる」
「ざけんな、てめーは寝てろ」
「でも」
「ドン・ボンゴレの手を煩わせるまでもねぇよ」
そういって、ザンザスはツナヨシを肩からおろし、そのたくましい腕で横抱きに持ち替えた。
いちおう人並みの扱いにしてくれたということは、この男なりに自分の体調を気遣ってくれているのだろう。めずらしい。
眩暈はするし、視界は今も霞んでいる。
ツナヨシはありがたく、お言葉に甘えることにした。
「ありがと、助かる」
「また一つ貸しだ」
「はは、さっさと返済しないと後がコワイよ」
敵対ファミリーの総本部。周囲を敵勢に囲まれすぐそばを銃弾が飛び交う。銃声、剣戟、爆発音に怒号に悲鳴。それなのに。
それなのに、このたとえようもない安心感はなんだろう。
自分でもわかっている。戦闘の余韻に気分はハイテンションだ。
愉快だ。あまりに愉快で、笑い出したくなる。
思考も少し、トんでるのかもしれない。
穏便に解決するはずが、いつの間にやら殲滅戦。
おかしいな。けど、そんなコトはどうでもいい。
血と硝煙が立ちこめ。かたわらにはこの男。
かつての敵で、今も配下に降(くだ)りはしない。


――――決して味方にならない男の腕に抱かれ、ツナヨシは意識を手放した。



END.
作品名:悪魔と踊れ 後編 作家名:きみこいし