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ハロー、僕の運命。

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中々戻ってこない帝人を心配した正臣が先ほどの部屋に戻ると、子供二人を目の前に正座させ、自らも姿勢を正し滔々と説教をしている幼馴染がそこにいた。
「いいですか。子供の特権の一つに素直というものがあります。心のままに行動できる、これは大人になると中々できるものではありません。ゆえに僕は子供の内ぐらいは自分に素直に生きるのはいいと思ってます。けれどそれが他人に迷惑を掛けるという点では肯定しかねます。あ、でも悪人ならいいですよ。さっきのひとみたいな人間ならどんどん迷惑掛けて良いです。まあつまりは素直良し、しかし人に迷惑を掛けるなということです。喧嘩は結構、でも僕を巻き込むのはよしなさい。巻き込むならあの金髪のお兄ちゃんにしなさい」
「どさくさまぎれに何言っちゃってんの帝人さん!」
「あ、正臣居たの」
「居たよ!首を長くして待ってても来てくれない帝人を探しに来たのに、何その仕打ち」
「ごめん☆」
「軽いなオイ!」
二人の力関係が如実にわかる会話である。
置いてかれた子供二人はぽかんとその会話を聞いていたが、だんだんと子供ならではの独占欲がわいてきたのか、テンポよく弾む会話に無理やり入り込む。
「ねえ、みかどくん。このひとだれ?」
「ん?ああ、彼は」
「お、何だガキんちょ俺に興味あるのか?いやぁ子供にもわかる俺のカリスマ性には困ったもんだ!仕方ねぇ、いっちょスーパーでヒーローなこの俺の名前を特別に教えて進ぜよう!俺の名は「バカ田バカ臣だよ」って帝人さん違うから!」
「へえ、名は体をあらわすっていうけどほんとなんだね、バカ田さん!」
「ノミムシと同じなのはむかつくけど、たしかにバカっぽい・・・・・」
「・・・・・・・・帝人、こいつら捻っていい?」
「あはは駄目に決まってるでしょ」
子供相手に本気で喧嘩しそうな幼馴染を追い出し、帝人は二人を立たせる。
思わぬ事態で長居をしてしまったので、早く子供達を親元へと戻さねばならない。
「そろそろ帰ろうか」
「やだ!もっとみかどくんといたい!」
「・・・・・・おれも」
再び足に引っ付く子供らに、帝人はため息を吐きながらも苦笑した。
子供は嫌いではない。
慕われるのだって、嬉しくないわけではない。
しかし、彼らを待っている人達が居ることは確かだし、帝人にもまだやるべきことが残っていた。
そう説得しても、子供達は中々頷いてはくれない。
我の強い子達だなぁと思いながら、帝人はある提案を持ちかけた。
「それじゃあ、僕を探してごらんなさい」
「さがす?」
「そう。かくれんぼみたいなものだよ。少し違うのは僕には隠れる意思は無いということだ。僕は普段通りの日常を過ごす。そんな僕を君達は探し出すんだ。期限は・・・・そうだね、君達が飽きるまでにしようか」
どうする?と帝人が首を傾げると、二人の眸が強く意思を持ち「やる!」と声を揃えて応えた。
「それじゃあ、君達が家に戻ってからゲームスタートだ。・・・・楽しませてくださいね」
契約書も証人も居ない、3人だけの簡単な口約束。
だが帝人は自分の勝利を確信していた。
部屋を出て、子供二人を近くに居た人間に託す。
「ぜったい見つけるからね。そしたらおれのおよめさんになってよ!」
「ノミムシには負けねぇっ、おれのが先にみかどさんにたどりつくからな!」
子供らの宣言を笑みを深くして受け取る。
小さな背中二つが角に消えると同時に踵を返す。
カツカツと無機質な音をたてて、廊下を歩く横顔は子供らに見せていた顔とは対極のものだった。
帝人が進む方向にスーツを着た男達が待っていた。
彼らは帝人を認識すると一様に腰を曲げる。
「ごめんね、待たせて」
「いえ、大丈夫です。ボス」
裏で生きる者なら知らない者はいない『DOLLARS』という組織。
この世界を統括し管理しているマフィア。
その頂点に君臨するのが、―――竜ヶ峰帝人だった。
しかし組織が有名でも、その事実を知る者は存外少ない。
そうさせたのは帝人だからだ。
自分が自由に動けるように。
己の世界で法や秩序を犯す人間を、直接粛清するために。
帝人は笑う。
子供心を弄ぶようで、申し訳ないがこれも彼らの為だろう。
自分に関われば、否が応でも裏の深層まで足を突っ込む羽目になるのだから。
(でも、彼らがどんな大人になるかは少し興味があるかも)
そう思いながら、帝人は開かれたドアの向こうへと足を踏み入れた。
蒼い眸に、恐怖に塗れた人間の姿が映し出される。
これが僕の生きる世界だと、帝人はうっすらと微笑んだ。




その数年後、帝人の前に見目麗しい二人の少年が現れるのだが、今の帝人がそれを知る由もなかった。


作品名:ハロー、僕の運命。 作家名:いの