ハロー、僕の運命。
わめきながら引き摺られていく男を見送って、帝人は深いため息を吐いた。
「・・・・・疲れた」
男の長話は帝人の神経を著しくすり減らしていた。
ああいうタイプをあしらうのは不得手ではないが、好きではない。
できればお近づきにはなりたくないのだが、そうも言ってられない立場に帝人はいる。
たまに押しつけられた感がしなくもないが、しようがない。
とにかく間に合って良かったと、連れ去られた子供達を思い返していると、両足に負荷がかかった。
「ん?」
反射的に視線を降ろせば、子供が二人、帝人の右足と左足にそれぞれひっついていた。
「あれ?君達、正臣と一緒に出なかったの?」
帝人が将来有望だと感じた、折原と平和島の息子。
たしか名前は臨也に静雄、だったっけ。
子供達とは初対面だが、彼らの親と帝人は顔見知りだ。
よく自慢されて、(これが親ばかかぁ)と思っていたけれど、確かに彼らは自慢したくなるなと帝人は納得する。
種類は違えど、二人とも美少年の部類に入る顔立ちをしているし、あの状況下での態度を見ていると内面も中々のものだろう。
現に、帝人の足に張り付いている二人は、一人の男を断罪した帝人を恐れることなく、痛いほどまっすぐな瞳で帝人を見つめていた。
きらきらと輝く眸に、あらためて彼らを救えて良かったと思う。
「ねえ、お兄さんってりゅうがみねみかどっていうの?」
「そうだよ」
帝人が頷くと、二人の顔が同時に明るくなる。
その変化に首を傾げようとした矢先に、爆弾が投下された。
「じゃあ、みかどくん!すきですけっこんしてください!!」
「ばかノミムシ!!みかどさんはおれのよめになるんだぞ!」
よめ、ヨメ、YOME、嫁?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」
「おれがさきにひとめぼれしたんだからね!しずちゃんはあっちいけ!」
「ノミムシこそあっちいけ!みかどさんにさわんな!!」
どうやら仲が宜しくないらしい子供二人がきゃんきゃん騒ぐ中、帝人の思考いまだ追いついていなかった。
えっとなに?僕いま初対面とも等しい子供にプロポーズされたの?
お付き合いすっ飛ばしてプロポーズ?
いやいやいくら将来有望な子供相手でもそれは引くわ。
「・・・・・・・・・・・・・うん、今日は早く帰って寝よう」
現実逃避を図った帝人の台詞に反応したのはやはり件の子供らで。
「おれもおれも!みかどくんといっしょにねるー」
「ほろべノミムシ!おまえといっしょにねたらみかどさんがよごれるだろ!」
「なにそうぞうしてんのさ。しずちゃんのむっつりすけべ!」
「なっ、てめぇのがすけべだ!」
「・・・・・・・」
帝人の華奢な手が小さな頭にそれぞれ乗せられる。
体力値が平均以下の帝人だが、そこは腐っても成人男性。
全力の握力は子供の柔らかい頭にはかなりのもので。
「「いだだだだだだだだッ」」
「君達ちょっと黙ろうか」
「「ごめんなさい!」」