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行って来ます

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「……ルナマリア」
「抱きしめて欲しいの?」
微かにでも混乱しているような風を悟られないように、思わず口に出してしまった彼女の名前は、いわゆる自らへの戒めのようなもので。しかし彼女は何を取り違えたか、しごく真面目な顔でそうたずね返してきた。
「畏れ多いのね」
彼女の細い両腕が、ああ、と返事を返して、頷くその前に自分の背中に回り、レイの巻き毛を、押さえつけるように優しく撫でる。
人はどんなときに泣きたくなるのだろう、それが今だとしたら自分は納得できるかもしれない、レイはそんなことを考えながら、軍服の襟に額を押しつけ、死の香りが漂うそれを胸に刻み込む。
「大丈夫よ」
だいじょうぶ、と言い聞かせるような低い声がした。
「きっと言えるわ」
人にしか出すことのできない、優しい優しい音が。
「『逝って来ます』って明日も、出て行けるから」
抱き寄せた温もりは、たった今彼女が生きていることの印。
その首筋に顔を埋めて、レイは改めてそのことの尊さを思う。
「ああ」
頷いて瞑目すると、耳許にささやくような彼女の吐息。
「行って来よう」
そうして俺たちは。
明日も死を歓迎して、あの闇へと飛び立つのだろう。
作品名:行って来ます 作家名:keico