幼馴染パロ 短編集2
何かが、起きている
<何かが、起きている>
「正気か?」
「俺はいつだってまともなつもりだよ。あと本気だから。シズちゃんはどうする?」
「俺は・・そりゃ俺だっていいと思うけどよ・・・」
「なら俺たちは共犯ね。裏切ったら殺すよ。裏切らなくても殺したいけど」
「奇遇だな。俺もお前を殺したいと常々思ってた」
ひそひそと話していた2人はケッとガンを付け合う。
薄暗い部屋でベッドの側に座り込んでおり、窓の外はそろそろ深夜の暗闇に包まれそうな頃合だ。
そのベッドで寝ているのは1人の少年、帝人である。
タオルケットにくるまって、細く白い足が短パンから伸びている。
薄い胸がタンクトップからちらちらと見える様がいやに扇情的だ。
半開きの口、すやすやと穏やかな呼吸、長い睫が頬に影を落としていた。
「・・・やるよ、シズちゃん」
「本当に・・本気なんだな。お前」
「あたりまえだよ。こんなこと嘘でいえないよ。じゃあ・・・」
さっと手元の大きな鞄から取り出したるは、うさみみ、だった。
カチューシャに付けられた長い耳がふわふわと揺れて大層可愛らしい。
ごくりと生唾を飲み込んで、臨也の白い手がそっと帝人の黒い髪に覆われた頭へとうさみみをつけた。
すよすよ眠るうさみみかど。
じぃっと上から眺めていた2人だったが、突然
「がふっ」
うめき声をあげて静雄が片膝をつく。
片手で顔を押さえるが、真っ赤な頬までは隠しようがない。
「や・・やばい、やばいやばい、なんだこの破壊力ちくしょう天使か、いやうさぎさん・・うさぎさん・・・っ!!」
ぶるぶると全力で握り締めた拳が震える。
目の前の帝人の姿に悶絶していた静雄だったが、ふと隣の男がノーリアクションなことに気がついた。
ちらりと上を見てみれば、完全な無表情でカメラを回す男が。
「・・・おい」
「シズちゃんうるさい」
「カメラ・・・・」
「大丈夫、これ薄暗くてもちゃんと映るやつだから。こっち動画ね、あとこれで写真撮るから。ベストショット探すから」
そう言いながらじわじわとポジション探しに足を移動させる。
右足でゲシゲシ蹴られて移動を迫られた静雄だったが、キレもせずにおとなしく引いた。
もう一度そぉっと上からベッドを覗き込めば、すよすよ眠るうさみみかど。
くらりと眩暈が起きたように視界がゆれる。
「破壊力、抜群だな・・・」
「起きてるときは絶対やってくれないからね・・コスプレもさせたいけどさすがに着替えさせたら起きるだろうし、これが精一杯かなっていうか可愛いなぁもう!うさみみつけさせたらナンバーワンだよ!うさたん!俺のうさたん!!」
「声でけぇよ!」
小声で罵りあう2人だったが、その騒音にも帝人はびくともせずに眠り続けていた。
悲しいことにうるさい中で寝ることに帝人は慣れている。慣れたくなくとも、慣れてしまった。
カシャカシャと響くカメラ音、同時に光るフラッシュ、そして2人の声。
夜はまだ始まったばかりだった。
((・・・・・・っ!!・・・うさ・・・っ!!!))
作品名:幼馴染パロ 短編集2 作家名:ジグ