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子どものような恋をしようよ

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そう言いながら一瞬の隙もなく小指をつないでくるから、これは彼なりの約束のつもりだということに気づいて、なおさら顔が紅潮した。これ以上、自分を駄目にしてしまわないでくださいと、声を大にして叫んでみたい。しあわせが折り重なって束になったら、いっぱいいっぱいになってしまうこの胸はどこにそれを置いてくればいいと言うのだろう。彼から貰ったもののどれをも、置いて去ることなどできないとわかっていて!ただ、何より手に負えないのは、彼に困らせられることにすら自分は喜びを感じるだろうという点にあるという気はした。
「獄寺くんが、広くて複雑な世界が怖くたって、迷惑ばっかりかけたって、オレは気にならないし、気にならないその理由だって、獄寺くんは理解ってくれてるはずだよ」
だって、だって、言うまでもないことだけど、オレだって獄寺くんが好きなんだ。
寂しい言葉を言ってしまわないで、一人で全て閉じこめてしまわないで、オレは君を傷つけるものをできるだけ取っ払っていきたいと思ってるけど、獄寺くんも同じようにそう思ってくれているなら、きっとオレたちは今のままで全然問題ないんだと思うから。
彼の唇から何気なく放り出されるしあわせな言葉たちが、あいうえおにまで分解されて、音符のようにひらひらと頭上の空で躍っている。それを全てつかまえて楽譜にすれば、協奏曲にして弾きこなす自信は十分にあった。今はただ、喜びと喜びに挟み込まれて、全身がくすぐったい。気がつくとすっかり冷たさを失ってしまった左手が、寄り添うように顔を寄せてくる大事な人を引き寄せるかの如く動き出して、やっといつもの調子を取り戻せたような気がした。
「今のオレたちがみっともなくたって、獄寺くんだけが大人になっちゃうのは、オレだって嫌だよ」
てらいなく微笑む優しい顔が目前に迫って、ささやかな幸福の色を浮かべながら教えてくれる。
「だから、子どもみたいに格好悪くても、いいじゃない」
ややあって重なる唇に、勘弁してくださいと、眩暈のするような意識の奥で必死に両手を振る。ストップ、そこまでですよ、別にあなたの行為を止めたいとか、妨げたいとかいうわけでは全然ないけれど(むしろ幸福の中で眠ってしまいそうになっていることに気づいてはいますよね?)オレは今しあわせすぎてどうにかなりそうなんです。
終わりの見えない長いキスが、いたいけな子どもの約束のように、いつまでも2人を揺さぶり続けて離さない。
嗚呼、これだから駄目なんですよ、目を開いたまま途方に暮れる自分とは反対に、しあわせの4文字を顔に浮かべたあなたが子どものようにあどけなく笑う。
「子どもみたいな迷惑かけられたって、2人でいられることがオレは嬉しいんだから」
高く上がった太陽がようやく顔を出して、幸福にのぼせそうな一人の男の身の上をおかしそうに笑っている。
今は力強く握りしめられた左手がささやかな熱を放つせいか、別の意味で火傷でもしてしまいそうだ。
だから、と言い置いて、いたずらをしたときのように、ふふ、とほくそ笑むあなたの顔を前にオレは嘆息する。
「だから、これからも子どもみたいな恋をしていようよ」
10代目、あなたの前じゃこれだから。
いつまでたっても、オレは大人になんてなれやしない。