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どんなに綺麗な言葉より

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どんなに綺麗な言葉より



「たなごころ、という言葉がありましてね。」
「たな・・・ご、ころ?」

日本語を何か教えてほしいと言ったら、思いついた様子で日本さんが話し始めてくれた。

「それってどういう意味?」

わくわくとした気持ちを胸に問えば、そうですねぇ、と、この人独特の困ったような笑い方をされる。
僕はこの何とも表現しがたいような表情がなかなかに好きなんだけど、僕の兄弟はあまり好きじゃないみたい。
だって何を考えているのか分からないじゃないか!と胸を張って言われたことがあるけど、
それは単に君が空気を読まないことも要因の一つなんじゃないのかな、なんて返したなあ。

「たなごころ、というのは、掌と私の国の言葉では書くのです。てのひら、と、読むのですけど、
たなごころもこれと同じ文字で表すのですよ。英語だと、ハンドの意味になりますかね。」
「そんな何種類も読み方があるのかい?日本語って複雑ですねえ…!」

一言、ハンド、と言えばそれで済むじゃないか!と思ってしまうのは、僕が横着なせいだろうか?
すると、いえいえ、私はそうじゃないと思うんですよ、と彼は続けた。

そして突然、伏し目がちだった彼の目が僕の手を見つめ、僕の手首をつかんでみせた。
そうして、くるりと裏返して僕のてのひらを上に向かせて、とん、とてのひらの中心を指してみせる。

たなごころ、というのは、

「確かに、てのひらという意味ですし、ハンドという意味になります。
ですが、たなごころ、という言葉の中には、「こころ」という言葉が含まれているのですよ。
「こころ」とは、英語だとハートとかそういう意味ですね。
私は、たなごころという言葉は、何かそのような、てのひらの中心から更に奥深く、
心までも指し示すのではないか、と、考えるのですよね。」

だって、と、彼はまだ僕の手を見つめながら呟く。

「確かに、てのひらというものは、人の心をよく表すと思いますから。」

僕には、彼のその最後の言葉がよく分からず、思わずきゅっと手を握り返してしまった。
彼は少し目を見開いたけれど、すぐにいつものような穏やかな笑顔を浮かべ、握り返してくれた。

だって、ほら、と、彼は続ける。

「こうして手を握っていると、私より大きな手だなぁ、と分かります。
作品名:どんなに綺麗な言葉より 作家名:るり子