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どんなに綺麗な言葉より

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それはつまり、カナダさんが私よりも男らしいというようなことを表しているのではないでしょうか?
さらに、男の人の手ではあるけれど、まめができているほどの硬さではないでしょう。
それはきっと、あなたがもう武器の類を持たないことを指している。
少し、乾いているように感じますね。栄養はきちんと取っていますか?
それに、なんだか、とくとくとかすかにでも鼓動が伝わってきます。それは、何よりも。
あなたが生きている証拠ではないですか。」

そう、つらつらと述べてから、とてもきれいに彼は笑ってみせた。
あぁ、僕は手のひらを彼に見せただけでこんなにもたくさんのことを知られてしまった!
それは、なんとも不思議なことでもあるけれど、でも、嬉しいとも思ってしまう。
だってそれはきっと、彼が僕のことを理解してくれているということだから。
僕を見てくれているということだから。

だから、僕は、何を言うわけでもないのだけれど、にっこりと笑い返したのだ。

すると、彼もまたつられて笑う。けれど、何かを思い出したようにそういえば、と言った。

「カナダさんは、手が冷たいですね。私の国ではよく手が冷たい人は心が温かいと言うのですよ。」

カナダさんは心があたたかいのですね。
微笑まれたその顔は、しかしどこか寂しそうだった。
日本さんの手から伝わってくるのは、僕より少し高い体温。寒い国である僕よりも彼の方が手が温かいのは当然だが。
まるで、日本さんは自分の方が手が温かい分、心が冷たいと言っているように感じてしまう。
でも。

きゅっと、また、握る力を少し強める。
どうしましたか?と、問われたので、僕はいつも通りのへらりとした笑顔で答える。

「こうして手を握っていると、日本さんの体温が僕に移ってきます。
そうしたら、二人ともちょうどいい手の温かさになって、僕らは二人とも心が温かくなるんじゃないかな。」

そんなことを、思ったのです。

そう言うと、日本さんはまたもや驚きの表情を作った後に、ゆるりと微笑んでみせた。
そうして、手をつないだままでつぶやくのだ。
あぁ、あなたは本当に優しい人ですね、と。てのひらからだけでもそれが分かってしまうくらいに、と。
そんな彼の手を握り返し、まるで包み込むように両の手で覆ってみせる。
作品名:どんなに綺麗な言葉より 作家名:るり子