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仕方ない

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なら、まあそのこと自体が「奇跡」に近いんでしょう。
そんな2人が「奇跡」なんでしょう。
「そういえば、私どうしてレイを責めてたの」
「さあな。今となっては、もうどうでもいいことだ」
レイが組んでいた足をほどいた。これはもういいぞの合図だと受け取ってもいいのかな。だとすれば、ようやく俺の出番だとシンは腕をまくる。
「どうでも良くないわよ、そうやって何でも、支障が無ければあやふやにするのは悪い癖なんじゃない?そうか、私レイの悪癖を治そうとして」
「俺に悪癖は無い」
「言い切ったわね、見てなさいよ。今から本当の」
「ストップ」
ルナマリアの言葉をさえぎってこの言葉を口にするとき、自分はちょっとかっこいいんじゃないかとシンは思う。もう何十回目かになる、シン・アスカ講和会議だ。これにておそらく一件落着、未来に向けての条約締結はいりません。それはきっと、2人に任せてしまえば事足りること。
わかっていたって口には出してやらない。
気を遣う方の気持ちにもなってみやがれ、悔しくはないけど、わかりきったステップを踏んだダンスのはずが、面白いのは何故だか未だにわからない。いずれにしても、それは踊り手の問題だ。わかりきったステップをどれだけ美しく躍るか、それは踊り手の問題だから。
「もう、なんでいつもこんなことで言い争いするわけ?意味ないだろ」
聞いたってそれこそ意味のないことだって、わかってはいるんだけど、それでもシンは一応向かい合う2人に向かって問いかける。いわゆるお約束のパターンというやつだ(これも、今やダンスの演目の一部に組み込まれてしまった)。決まったタイミングに、決まった何かを持って、決まった様子で現れなければいけないのは。
いわゆる、息子に甘んじる者の苦悩というやつなわけであります。
「だって、仕方ないじゃない」
ルナマリアが、ふん、と鼻を鳴らして悪ガキみたいな顔をする。
でも、そんな顔をしても、ルナマリアはルナマリアなんだから、それが何だかすごいところだ。そこは、レイもきちんと認めてはいると思う。
「レイが私を好きで仕方ないんだから」
それはあなたが自慢することですか。胸を張って、誇ることですか。
さっき2人は俺のことを気にしていると言ったばかりだけど、実はそんなことないのかもしれないって思うことだってたくさんある。俺に罪悪感を持たせないようにして、その状況を楽しんでるんだ。前向きにもほどがあるし、それじゃあポジティブすぎる。いつだって、2人の優しい世界に巻き込まれて。
俺だって気を遣ってる。
俺だって気を遣ってる。
頭が痛くなるくらい、俺だって気を遣ってる。
「言うじゃないか」
これじゃあ猿ののみ取りだ、シンは今度こそ本当にため息をつく。いや、でもここは「奇跡」というものの可能性に免じて、犬と猫のじゃれあいとでもしておくか。
言っておくけど、動物なのはルナだけじゃないよ。レイだって、探せば耳としっぽが見つかるはずなんだ。
血も流さないで、お互いのこと噛みつきあってる。絶対爪をたてて、甘噛みしあってるんだって。
「俺の名をルナマリアに変えて、その言葉をそっくりそのまま返上しよう」
レイが右目を細めて、眩しそうにルナマリアを見る。
仕方ない?仕方ない?
仕方ないのはどちらともです。
俺は確信する。
分け入った森の中で、2人はいつも手をつないでるくせに。
愛し合ってることが前提だって、わかってるところがたち悪い。
作品名:仕方ない 作家名:keico