独占欲 『あめ』
いってらっしゃい、いってきます といつものように言い交わして茶渡の手がドアノブにかかった時、パーカーのポケットに入れた携帯電話が鳴り出して茶渡は通話を始めた。茶渡の答える分だけでも聞くのは悪かろうとリビングに戻ろうとした石田を、電話を切った茶渡が止めた。
「飛行機、飛ばないって。雨降ってきたんだそうだ」
「じゃあいつになるんだい」
「分からん、まぁ明日以降だろうな」
急すぎて、喜んだらいいのか泣いたらいいのか分からない。分からないまま、そう、とだけ言った石田の背中に、茶渡のやけに明るい声が抱きついてくる。
「なぁ、嬉しいならそう言っていいんだぞ。言ってくれよ、たまにはさ」