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マルナ・シアス
マルナ・シアス
novelistID. 17019
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【東方】東方遊神記1

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待たせたね。これからあたしの観察記小説風が始まるから、まぁお前さんが暇で暇でしょうがない時にでも、ちょっと目を通してみておくれよ。絶対楽しいとは保証できないけど、前にも言った通り、暇潰しくらいにはなると思うからさ。


①突然の可愛い訪問者

 ここは幻想郷。人間・妖怪・幽霊・悪魔・神様など様々な存在が住み、それぞれのリズムを持って日々の暮らしを営んでいる。顕界とはまた別の次元にあり、顕界の人々が忘れてしまった、原風景が残り、時の流れが緩やかに感じる世界。しかし、そんな穏やかな時が流れる幻想郷でも、ちょっとした事件はあるわけで。今回の事件は妖怪の山の奥、守矢神社に少々変わった客が訪れるところから始まる。

「うぅ~ん、ムニャムニャ・・・」
今炬燵(こたつ)の中で気持ちよさそうに寝ている可愛らしい女の子。実はものすごい力を持った神様なのである。かつてはその力でもって民草から絶大な信仰を集めていたが、今の彼女にとってはそんなことはどうでもよかった。彼女は、自分や自分の家族が幸せであれば、他はなにも望まないのである。しかし、今まさに彼女の幸せ、即ち心地よい眠りを妨害せんとする輩(やから)が彼女の傍に立っていた。本人に悪意はまるで無いが。
「おい、起きろ」
「むふ、むふふふふ~」
よほど幸せな夢を見ているのか、侵入者にも気付かず、声にも反応しない。繰り返し言っておくが、彼女は最高位の神様である。
「気色悪い声を出すな、起きんか」
「えへへ~、早苗~❤」
早苗というのは、守矢神社で代々宮司を務めてきた東風谷家の末裔で、特別な力を有し、その力でもって人間でありながら信仰の対象となった現人神である。因みに女性。例によって彼女も今となってはそんなこと以下略である(笑)。それよりも、この侵入者もいよいよ堪忍袋の緒が切れたのか、寝ている彼女(神様)の額をおもいっきりひっぱたきながら叫んだ。
「いいかげんに起きろぉ!!」
「うひゃあ!!」
流石の彼女もこれは堪えたようで、間抜けな叫び声を上げながら跳び起きた。
「え?なに?なになに?何なの?」
「やっと起きたか、骨を折らせおってからに。そちに聞きたいことがあるのじゃ。いくつかの質問に答えてくれんか?」
「えっ?えっ・・・と、別にかまわないけど・・・」
「ん?なんじゃ、不満があるのか?」
他人の家に勝手に入って、さらに寝ているところを叩き起しておいて、不満もへったくれもないものである。まぁ幻想郷では昔から常識に囚われてはいけないといわれているので、これもある意味間違っていない・・・か?
「不満・・・っていうか・・・あなた、誰?っていうか、何者?」
「ん?おぉ、そうじゃったな。まずは我の事を話すのが筋じゃな。」
侵入者は居住まいを正し、咳払いを一つした。
「我の名は青蛙神(せいあじん)。はるか昔大陸で蝦蟇(がま)という仙人と共に民草に功徳を説いて回っていた神格じゃ。」
青蛙神と名乗った侵入者は、腰に手を当て、ない胸を張りながら言った。
(神格・・・ねぇ・・・確かに、それなりに力はあるみたいだけど・・・)
本人はそう言っているが、あまりそうは見えなかった。というのも、彼女(また女である。どうやら幻想郷というのは、力を持った女が多く集まる世界らしい)の見た目である。
この侵入者、どう見ても年かっこうは十かそこら。着ている服も、蛙の形を模したフードがついた、明らかに体の大きさに合っていないダボダボな青色のワンピース(洋服だね)を着ている。そして、そのワンピースの下から辛うじて一本足のつま先が見えている・・・ん?一本足?
(立ち方もバランスがとれてるし、片足を失ったというわけではなさそうね。少なくとも、人間ではないみたい・・・)
前述のとおり、幻想郷では様々な存在が生活しているが、ある一つの共通点がある。それは、一目見て明らかに異形の者とわかるような存在はほとんどおらず、皆人間に酷似した外見をしている。中でも力の強い、存在力の高い者にその傾向が顕著であった。
「さぁ、我の事は話した。ついでじゃ、質問の前にそなたのことを教えよ。手短にな。」
こういうタイプは、本人には悪気が全くないのはどこの世界でも同じである。
「・・・ボクの名前は洩矢 諏訪子(もりや すわこ)。一応この守矢神社の第一神なんだけど・・・」
自分でそう言いながら、全然そうは見えないよなと、諏訪子は心の中で笑った。しかしこの笑いには自嘲的な意味合いは少しも含まれていなかった。単純に面白かったんだろう。「なんと!!正真正銘の神であらせられるか!!どおりで我を前にしても普通でいられるわけだ。人?は見かけによらないものじゃのう。いや、先ほどは大変失礼をした。所で、第一神とおっしゃったが、まさか、もうお一方神がおわすのか?」
純度100%の神様に会えたのが嬉しかったのか、青蛙神は少し興奮しながら一気にまくし立てた。
(う~ん、面白い子だなぁ)
それについてはあたしも同感だね。おっと、危ない危ない・・・続けるよ。
「えーと、それは・・・」
諏訪子がどう説明しようか考えていると、誰か体重の軽い人間が走ってくるような、タンタンという音が近づいてきて、二人がいる部屋の襖が勢い良く開いた。