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"忘却は罪"と忘れること勿れ

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未来で百蘭との戦いを終え過去へと戻った僕達を出迎えたのはボンゴレの継承式
沢田綱吉が正式にマフィアのボスとなる、避けられぬ宿命の鎖
予想外の、シモンファミリーによる裏切りによって、多くの犠牲を出す形で終わりを迎えたあの日
永いボンゴレの歴史に少なからずの衝撃を与えた
誰よりも仲間の大切さを知っていた彼は、誰よりも悲しみ、誰よりも傷ついた
ボンゴレ解体、を彼が真剣に考え始めたのも、この継承式の後だった気がする
“眉間に皺を寄せ、祈るように拳を振るう”
そう形容されるほど、彼にとって戦いはマフィアは、罪の積み重ねでしかなかったのだ

『雲雀さん』
いつだったか、彼と2人で任務に就いた時のこと
散らばった死体の山々の中で、彼は自分の汚れた掌を見つめ、こう呟いた
『オレは…誰なんでしょうね』
ボンゴレ10世なのか、沢田綱吉なのか…
『…さぁね』
僕は曖昧に答える
―曖昧に答えるしかなかった
僕にすら、今の彼はどちらなのか分からなかったから
自分の無力さに眉間に皺が寄る
彼も察したのか、苦笑を漏らした
『すいません、変な事言っちゃって…』
忘れて下さい、
そんなことを言ってほしくなくて
僕は咄嗟に紡ぎかけた彼の口を塞いだ
『んぅっ…は、ぁ…なにすっ…』
『君は、』
今の君はボンゴレ10世ではなく、ただの草食動物の沢田綱吉だ
そう言ってやれば、彼は泣き笑いどっちともつかないような表情を浮かべる
『もし君が、君自身を忘れても僕が覚えてる…だから』
―僕を頼って
後で思い返せば、子供のようだと思った
自分の欲しいものが入らず駄々をこねる非力な幼子
彼はただ黙って聞いていた
その顔に、何の表情も浮かんではいない
僕は拳を握り締めた
つぷ…爪が皮膚を突き破り、後から鈍い痛みが襲う
遅れて生温い液体が指の間から零れ出た
はっきり言えば、この時僕は悔しかったのかもしれない
彼の目の前には確かに自分がいるはずなのに、彼を取り巻く闇に己は存在していない、その事実が腹立たしかったのだ
いたたまれなくなり、僕は彼に背を向けて歩き出す
とん―
『!』
…不意に、歩く背中に縋る体温を感じた
『…何』
自身も驚くほど、冷たい声を出した僕
びくっ…彼の震えがスーツ越しに伝わる
嗚呼…彼は今、
『ひ、ばり、さっ…』
泣いているのだ
ボンゴレを継いでから一切泣かなかった彼が今、僕の背中で啜り泣いていた
…現実味を帯びない感覚
僕は振り向いて彼を抱き締めようとした。が、彼はそれを拒んだ
『あと少し、だけ…少、しの間だけ…』
嗚咽を漏らしながら、彼は泣き続けた
…それが僕の見た、沢田綱吉の最期