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欲しくなかったもの

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欲しくなかったもの



池袋に生息を許さない害虫がいたので、殲滅しようとしたけれど逃げられた。
逃げ足だけは速い。
我に返ると、手にひしゃげた標識。遠巻きになった見物人。
そうだ、まだ仕事中だったのに。
標識を元の位置にはめ込んで、辺りを見回す。
と、探し人はすぐに見つかったけれど、声をかけるのをためらう。
同年代か、少し上位の、知らない男とトムさんが喋っている。
こちらに背を向けたトムさんの表情はわからないが、相手は親しげにトムさんの肩に手を置き、なにやら熱心に話しかけている。
近づくと、トムさんがちらりと、こちらを振り返った。
目が合うと、片手を上げて、ちょっと待ってろ、の合図。
それにつられたか、相手の男もこちらを見て、目があった。
あ?
何か今、笑われた、気がする。
トムさんの肩を引き寄せて、内緒話するように、耳元に口を近づける。
トムさんは抗うでもなく、何を言われたのか、くすぐったそうに笑う。
ムカ。
何だ今の。
何だ今の。
何だ今の。
落ち着いていた感情がまた爆発しそうになる。
でも、対象がよくわからない。
何かむかつく。けど、何がむかついたのかよくわからない。
触らせんなよ、とは思った。
でもそれは理不尽な要求だとも思う。
2人は親しい友人のように見えたし、それならあれくらいの接触は普通だろう。
俺がふつふつと不完全燃焼に煮えていると、話が終わったのか、トムさんがこちらに来た。
相手の男は、反対の方向へ。
それを見て、少しホッとする。
「曲がってんぞ標識」
「・・・っすね」
「ま、いっか。次行くべ」
「はい」
今の、誰ですか。とか。
聞いたらうぜぇかな。
「聞かねぇの?今の誰って」
「えっ・・・あ、えと」
「元彼」
ごつ。
あ、電柱に頭突きしちまった。
「・・・うかつに冗談言えねぇな、俺」
電柱さんごめんなさい。と、トムさんが、ヒビの入った電柱を撫でる。
「・・・冗談っすか」
「うーん。1回やっただけ?あれ?2回だっけ。彼氏っつーほどの付き合いじゃねぇな。普通にお友達」
それ普通にお友達って範疇に入れていいんですかとか。
この人に対して言っても仕方ない。少なくとも、過去のことに対しては。
「・・・・・・・・・何話してたか、聞いてもいいっすか」
「今誰と付き合ってんのーて聞かれたから、あそこで暴れてる金髪のでかい方って答えたら、嘘つけーて笑われて嘘じゃないべーつって。んでこないだ2ショで撮った写メ見せたら驚かれて、でもま幸せそうでなによりって」
「・・・・・・・・・ちょっと待ってください処理が追いつかねぇ」
「幸せですよーってのろけてきた」
「・・・・・・ソウデスカ」
「そうですよ。駄目だった?」
「ダメじゃねぇっす。けど何か複雑な・・・。写メってどれ見せたんですか」
「え、それは静雄怒るから秘密」
「・・・・・・何かあの野郎さっきガンくれて笑いやがったんですけど!」
「気にすんな。さ、仕事しよう仕事」
「・・・・・・トムさんオープンすぎです」
この人と付き合うようになってから、今まで知らなかった感情を覚えるようになった。
もやもやとした、どす黒い、きれいじゃない気持ち。
「静雄、そこ右」
ビルとビルの隙間のような、狭い路地を示されて、従う。
昼間なのに薄暗い、見上げると細長い空があって、先を見ると行き止まり。
「って、トムさんここ」
「ちょっと屈んで」
壁に背をついたトムさんが、俺の襟元を引っ張る。
「な、」
カシャンと、眼鏡の縁が当たる。
薄く開いたままの目が、レンズ越しに。
「・・・・・・ふ。機嫌、治った?」
「・・・・・・外ですよ」
「見えねぇよ」
腕を首に回されて、ぶつからないように両手を壁に付く。
影になって見え辛い表情で、トムさんの低い声が近すぎて、数メートル先の喧騒が現実的で。
もう一度重ねた唇は、軽く押し当てるだけのもので、宥められているのだとわかる。
「仕事中・・・」
「先に逸脱したのはお前」
「・・・・・・でしたね」
害虫のせいだ、害虫の。
「先に嫉妬してるのは、俺」
「え」
とん、と肩を押されて、離れる。
「休憩終わりー。じゃ、行こうか」
「トムさん?」
「何だよ」
いつもと変わらない口調で、路地から先に抜け出したトムさんの表情は、やはりいつもと同じ。
わかりにくいなぁ、と思う。
俺頭悪ぃって、トムさん知ってるじゃないですか。
なのになんでこう。
「・・・今日終わったら、トムさんち行ってもいいっすか」
「あー。さっきの奴と飲み約束したんだけど」
「・・・!2人でっすか!」
「おうよ。久々だったもん。あ、お前も来る?」
なんで元彼とああ違った「ただの普通のお友達」だったっけかにしても1,2回関係した野郎と恋人を二人っきりにさせて平気だとか思うんだこの人は!あり得ねぇ!
瞬間的に沸騰した俺を、トムさんが面白そうに見上げる。
自分には絶対暴力奮われないっていう自信が彼に余裕の顔をさせている。
それがまたむかつく。
「行きますよ!」
「俺のお友達に怪我させんなよ」
「それはわかりません!」
「正直な奴」
俺が硬すぎるのか、トムさんが柔軟すぎるのか。
なんで元彼とああ違った略、と今彼の俺?と同席で飲みとかよく考えなくても修羅場な状況をこんな楽しそうに提案できるんだか、マジでわからん。

作品名:欲しくなかったもの 作家名:かなや