憧れの日常
「ねえねえシズちゃん知ってるー?前にネットで噂になってたのを思い出したんだけどね、布団を干した時のいい匂いって、ダニの死骸や糞の匂いらしいんだってね!なんかガッカリだよねぇ!」
「いーざーやーああぁ!手前はあぁぁぁ!そのクソふざけた口を閉じやがれ!ひとの記憶まで汚すんじゃねぇよこの野郎!!」
自販機が飛ぶ。怒号と折原臨也の軽口が飛ぶ。逃げる男と追う男。セルティと帝人は今日も見物――もとい、事の成り行きを見守っている。
『そうなのか帝人?!早く森羅にも知らせてやった方がいいかな!』
「臨也さんの言ってるアレですか?んー、間違っちゃいないけど正確な事も言ってないって感じかなぁ。ググってみれば分かると思いますけど、大丈夫ですよ」
先生なら知ってると思うけどなぁ、という帝人に、そうかとセルティはため息をつき(正確にはそういう仕草をしただけだ)。彼らの眼前でまたひとつ、自販機が喧嘩の犠牲になった。
あの静雄がおずおずと、「知り合いの高校生んちへ持ってく手土産って何がいいんだろうな。そいつ、好みが結構渋いんだけどよ」と相談された時はどうしようかと思ったセルティだった。「お前が良いと思うものでいいんじゃないのか?」と無難なアドバイスを返しておいたが。
――それにしても、帝人のアパートにお邪魔したのが楽しかったんだなぁ
よかったよかった、とセルティは頷く。いずれにしても、友人が幸せそうなのはいいことだ。
無自覚バカップル誕生と、彼女が彼らに振り回されるようになるまで、あと少し。
End.
臨也さんのアレはわざとです。分かって言ってます。あのタイミングでアレを言うのは盗聴でもしてたのかとか、そういうのは企業秘密だそうです。