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彼の見た夢

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ピクリ、と、臨也さんの瞼が動いた。
「臨也さん?」
僕は呼んだ。

救急車で搬送された臨也さんは重傷だったものの、命に別条はなく、目を覚ますのを待つだけだと医者に言われた。

正直臨也さんが目を覚ますまで僕がこの病室に居ていいのかわからない。
だって、僕は臨也さんと離れたんだから。
目を覚ました臨也さんに非難されたら、僕の心の傷はまた大きくなるだけだ。
だけど結局今日で3日目、また臨也さんに会いに来てしまった。
2か月ぶりに会う臨也さんは僅かにやせたような気もするが、元が細いからたいしてわからない。
けれど医者は『栄養失調』とも言っていた。

またピクリ、と、臨也さんの瞼が動く。
その瞼がスローモーションのようにゆっくり持ち上げられていくのを、僕はぼんやりと見ていた。
目を覚ました臨也さんは、そのまままっすぐに天井を見ていた。
僕は声もかけられず、ただどうしようかと頭を悩ませた。
「…帝人くん?」
呼ばれて見ると、いつのまにやら臨也さんが僕の方を見ていた。
「あ、気分は、どうですか?」
間抜けな質問だ。
腹を刺されて大量出血で、一命を取り留めた相手に言う言葉じゃない。
でも、『良かった!!』と言って泣いて抱きつくには、今の僕達の関係は微妙過ぎる。

「あんまり、よくないかも。」
「そう、ですよね。」
「なんかね、俺すごい怖い夢を見てたみたい。」
苦笑した臨也さんはよっと勢い付けて頭を起こした。
「あ、大丈夫ですか?」
「うん、平気。」
怖いのは夢だったから、と、臨也さんは笑う。

「あー、良かった。」
臨也さんが機嫌良く笑う姿を見て、安心した僕は次の瞬間目を見開いた。
「臨也さん?」
臨也さんは泣いていた。
笑いながら目が潤んで、堪え切れないように目元を落ちて行く。
「あれ?」
臨也さんが自分の頬に触れて、さらに楽しそうに笑った。
「俺ってばいい歳して怖い夢見て泣いちゃったよ。」
僕はなんて言ったら良いかわからず、そっと臨也さんに手を伸ばすと、その手を引っ張られ思いっきり抱きつかれた。
あまりの強さに骨がミシリと鳴る。
「すごい、怖かったんだよ。」
臨也さんの声が震える。




「君と別れる夢を見たんだ。」

作品名:彼の見た夢 作家名:阿古屋珠