王子様とゲーム。
「さあて、今度こそ始めるぞ」
ようやく諦めがついたのか、緑川の膝の上おとなしくなった吉田に、夏木が掛け声を掛ける。
「そーれ、いー……?」
輪の中から上がる唱和の声にあわせて、緑川が己の肩口まで手を振り上げた。けれど、いざ振りおろすという段になって、その手が途中で止まる。何事か、と訝かる面々の前で緑川が隣に立つ夏木を仰いだ。
「なあ、王様よ」
「なんスか?」
「尻叩きということは、やっぱりパンツは脱がせる物なのか?」
「なっ! よ、止してくれよ!」
生真面目に問いかけた緑川に、誰より先に反応したのは当の吉田本人で。次いで、夏木がぶっと吹き出す。
「そうだ、そうだな! ドリさん、パンツも脱がしてやってくれ」
「了解」
「やっ、やめ、やめろってば!」
ぶひゃひゃひゃひゃ、腹を抱える王様夏木の命令に、緑川もにやりと口角を上げると、暴れる吉田をなんのその楽々と膝と肘とで押さえつけ、ジャージの縁へと手を掛け一気に引き下ろした。ああ、と吉田が悲鳴を上げる。そのまま再び手を振り上げた。
「それ、いーち!」
「あっ!」
掛け声とともに、今度こそ下ろされた手が吉田の剥き出しの尻を打つ。ばしん、と乾いた音が食堂に響いた。
おしまい。