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【土沖土】土方を何にでも利用する沖田の話

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噛み付くくちびると柔らかな赤い舌を受け止めてやったのは生涯忘れ得ないことで、初めて性交をしたのはあれがまだ十五のときだった。
沖田の歯はつるつる白く、子犬のように薄っぺらで刃物のように危ない。まだそういう加減も知らないくせ我武者羅に口付けを重ねようとするものだから、あちこち随分と傷にされた。山崎などは「副長が朝に味噌汁を飲まないのは、たいてい口内炎の出来ている日ですね」と不養生を大げさに嘆くよう言うが、土方が朝に味噌汁を飲まないのはたいてい沖田に行き過ぎた甘噛みを繰り返された日だ。

叱ろうか、と、一度考えたことがある。外で街灯に騙されて蝉の鳴く夜、開け放した縁側の向こうへ延々と煙を吐いていたのだが、どうにも黒い麻がざらざらと擦れるのだ。着流しの襟を開け鎖骨の下にある不自然な歯形をなぞってみれば、それが熟れたように熱い痛みを持っていた。指へ煙草を預けたまま眉を顰めると沖田がぺたぺた寄って来て、(これは素足の畳を踏む音、)「ねえねえ土方さん」とじゃれついてくる。

「総悟」
「なんですかィ」
「お前、噛んだりすんの趣味なのか」

問えば「?」「うん」「すき」とあの無表情をことり右にかしげて返すので呆れ果て、しかし、そうか好きなのか、それでは仕方ないな……と溜め息をついた。
沖田が自分に望むのなら、それを咎めることや窘めることは不毛なのだ。だって、土方は沖田を出来る限り甘やかそうと考えている。多少痛いくらいや、苦しいくらいや、屈辱的なくらいや死ぬほど忌々しいくらいだったら受け止めてやろうという気分で沖田に接している。そういう意味では、噛み付かれるくらいに分かりやすい方が都合がいいのかもしれなかった。

「俺は土方さんをどんな小さな、どんなくだらないことにだって利用してやりたいんでさァ」と、沖田は笑う。




十八になると噛み癖はなくなったが、今度は廊下で擦れ違いざまおかしな場所に口付けをしてくるようになった。くちびるや頬ではなくて、その下、土方の顎の滑らかに尖ったところだ。