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マルナ・シアス
マルナ・シアス
novelistID. 17019
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【東方】東方遊神記3

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「・・・そんなわけで、気がついたら諏訪子殿の寝ていた部屋に私も倒れていたというわけです」
ひとしきり話し終えた青蛙神は一つ大きなため息をつき、お茶で喉を潤した。
「なるほど・・・両端にリボンのついた空間の亀裂・・・やっぱり、スキマ妖怪の仕業かい」
外の者が幻想郷に入る方法はおのずと限られてくるので、これに関しては三人とも驚かなかった。
「スキマ妖怪?」
その呼び方だけを見れば、なんとも低級そうな妖怪である。
「あぁ、スキマ妖怪っていうのは、この幻想郷にいる妖怪の中でも最強の力を持つ怠け者、八雲 紫(やくも ゆかり)のことだよ」
いくら神奈子といっても、あの八雲 紫と戦うとなれば、そう簡単にはいかないだろうから、あまり軽々しいことは言わない方が・・・もしかしたらそばで聞き耳を立てているかもしれないし。あ、でも今は確か冬眠の時期だったか。
「幻想郷最強・・・八坂様にそう言わしめるということは、相当なものなんでしょうね」そう言いつつ、青蛙神は頭の中で大陸で話を聞いた尾裂狐(おさき・九尾の狐とかのことだね)を思い出していた。あれほどの大妖ならば、顕界で自分がされたようなこともできるかもしれないと。しかし残念。九尾の狐はそのスキマ妖怪の式神だ。つまり八雲 紫はその遥か上を行っている。
・・・あたしも九尾の狐は上から見たことあるから知ってるけど、それを式神にしちまうなんて、どれだけのレベルなんだろうねぇまったく・・・おっと悪い、続けるよ。
「あぁそうだね。あいつがあの能力を最大限に使ってきたら、おそらくあたし達でも相当苦戦するだろうね」
要するに、上位神と互角の戦いができるレベルというわけだ。
「でも紫って本気の力を出したことがないって話じゃん?」
まぁ怠け者ですから。
「というより、幻想郷の有力者の皆さんは大体本気になりませんよね」
それはあなたが仕える二柱にもいえることです。そもそも本気になるような機会がないし、仮に本気の力を使った場合、後の被害が尋常でなくなることくらいはそれぞれ容易に想像がつくのだろう。あの幻想郷名物のルールもあるし。「それよりも、今の話からすれば、青は紫にこっちへ連れてこられた時は、もう存在力が枯渇して消えかかっていたんだよね?今はちゃんと実体化しているみたいだけど、どうやったんだい?」
確かにそれは不思議だ。いくら新天地として幻想郷に移ってきたとしても、幻想郷の住人はまだ誰一人青蛙神の事を知らないはず。だから、幻想郷に移ってきただけでは存在力はほとんど変化しないはずなのである。
「まぁ確かに顕界よりもこっちの方が環境が断然良いというのはあるけど、それだって影響としては微々たるものだよ。そんな、実体化して、寝ていた僕に一発おみまいするほど回復するのはおかしいよ」
諏訪子さん、今更その話をぶり返さなくても・・・。
「いやっ、あれは本当に失礼しました。御二方の疑問ももっともです。これは、ある物を自分の依代(よりしろ)として使ったのです」
依代というのは、通常は神霊や霊獣が招き寄せられて乗り移るもの。異例として神霊などが自分を保つために自ら乗り移ることもある。依代になるものは霊験あらたかなものであるほどよい。青蛙神の場合は異例の方だろう。
「なるほど。確かに依代を使えば手っ取り早く存在力を高めることができる」
厳密にはこれは存在力が高まるわけではない。依代が持つ神秘的な力によって、枯渇した分の存在力を補うといった形になる。尤も、こんな細かいことは覚えておく必要はない。「えぇ。それで、諏訪子殿が寝ていた炬燵の机の上に、剥き出しの目玉が二個付いた、なんとも面妖な帽子があったので、思わずそれを手に取ったのです」
確かにあの帽子はかなり興味をひかれるデザインだ。
「ケロたん帽子のことか」
ずいぶん可愛い名前だが、全く見た目にそぐわない。神奈子のセンスがうかがえる。
「面妖って・・・」
諏訪子は会う人会う人全て自分の帽子のことを気持ち悪いとか怖いとか言われるので、いい加減もう言われ慣れてしまった。しかし、やはりとても大事なもので、大のお気に入りなので、けなされれば凹む。
「そうですよっ、可愛いじゃないですか」
その意見には賛同しかねる。
「・・・で、それを手に取った瞬間もの凄い力を感じたのです。戦慄を覚えるくらいの。これは良い物にありつけたと思い、早速依代として自身に取り込み、このように実体化できたというわけです」
そりゃあ凄い力もあるだろう。ケロたん帽子は何と言っても、日本最古の神獣といわれる『ミシャグジ』の化身なのだから。
『ミシャグジ』とは、遥か縄文の時代から一万年以上もの長い時を神獣として君臨し続けてきた存在だ。さらに、人間社会と密接に関わっており、人間の生誕・農作・軍事などに関する祟り神でもある。蔑(ないがし)ろにすると、たちどころに神罰を下すといわれていた。
「そういえば、なんか諏訪子に足りないものがあると思ったら、帽子が無かったのか」
納得といった感じに神奈子が笑うと、
「ちょっとまって・・・」
と、今まで普通に青蛙神の話を聞いていた諏訪子が、突如何か黒いオーラのようなものを出し始めた。
「依代にしたって・・・肝心の帽子は何処に行ったの・・・?」
体から出る黒いオーラがどんどん大きくなりながら、諏訪子はユラユラと、ゆっくりと、幽鬼のような面持ちで立ち上がった。