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マルナ・シアス
マルナ・シアス
novelistID. 17019
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【東方】東方遊神記3

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もうすこしで自分の体も霧散する。これから先、この世界にいるあらゆる人外は残らずいなくなるだろう。かつては全ての人間と人外が共存できる世界を夢見たこともあったが、今となっては万に一つも有り得ないことになってしまった。もっとも、もうどうでもいいことだが。
「なぁにあなた、まさかそのまま消えるつもりなの?」
全く予想していなかった声に、青蛙神は心底驚いたが、それでも上ずった声でなんとか聞こえてきた声に叫び返した。
「だっ、だれじゃっ!!」
あたりを見回しても、声の主らしき存在は見あたらない。いや、むしろ今の声は自分がいる位置よりも上から聞こえた気がした。地面からはるか上空にいる自分よりもだ。
「私が誰かなんて今はどうだっていいのよ。それよりも、あなたも見てきたでしょう?この世界はもう人間が完全に支配しようとしているわ。人外の存在を信じようとしない人間が蔓延(はびこ)っているから、そうゆう者たちにとって、もうここは地獄でしかない。おまけに、人間は神様の真似事までし始めた。その結果が、たった今あなたが見た状況よ。それは、人間が自分で神の存在を否定したことを意味する。こんな狂った世界で死ぬくらいなら、私のところに来ない?」そう話す声は小慣れた感じだったが、腹の読めないある意味不気味なものだった。
「くっ・・・」
この声の主が言っていることは、あながち間違いで
はない。むしろ、自分も同じようなことを考えていたのだ。
「そなたは・・・どこぞの神仏であらせられるか?」
少なくともそんじょそこらの妖怪にはこのような芸当は到底できない。青蛙神はあえてそう尋ねた。
「神仏?あっはっは!!いやぁ~ねぇ~、この私が神様や仏様になんかなれるわけがないじゃない。それよりも、返事を聞かせてくれないかしら。私のところに来る?それともここで無様に死に消える?」
青蛙神としては、この声の主の言葉はとても胡散臭く感じたが、共感はできた。どうせ消え去ろうと思っていたんだ、この先どんな事が起ろうが、なるようになる。別れて久しい相棒のことが少なからず心残りだが、それも今更だ。
「わかった・・・そなたの申し出、受けよう」
この声の主が悪者で、騙されたとしても、誰にも知られない愚かな笑い話が一つ出来上がるだけである。もう自分の好きなようにやろう。
「はいっ、一名様ごあんな~い!!」
声の主がそう言うと、青蛙神の目の前の空間に亀裂が入り、パカっと開いた。亀裂の両端がリボンのようなもので結ばれている。
「なっ!?」
亀裂は驚く青蛙神を勢い良く吸い込み、ピッタリと閉じて消えた。
「さてと・・・この娘は幻想郷にどんな面白いことをもたらしてくれるのかしら。それに、あの娘に会ったらきっとビックリするでしょうね、ふふっ」
そう独り言ちた声の主は少しクスクスと笑うと、急に黙りこむ。眼下一面に広がるドス黒い爆煙は、一行に弱まる気配がない。その光景を見ているのだろうか、声の主は先程とは打って変わった鋭い口調で、吐き捨てるように言った。
「あなたたちがどこに向かおうとしているのか、もう私には分からない。でも、私は、私が存在し続けられる限り、こちらの博霊神社と、消え去りそうな者を守り、助ける。人間どもよ、心しておきなさい。神や化け物のいない世界はいずれ滅びる。まぁせいぜい、お得意の化学の力でどうにかすることね」
そこまで言うと、それ以降女の声は聞こえなくなった。