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ある日の来良学園校門前

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「帝人君!18時間振りだね。会えて嬉しいよ。早く帝人君に会いたくてさ」

臨也は校門から出てきた帝人に声を掛けた。
帝人はその言葉を聞いてうんざりする。
だって、考えてもみて欲しい。
18時間振りってことは1日も経っていないうちにまた会ってるってことだ。
そして、それを言っている人間は、言葉通り本当に嬉しそうな顔をしている。
これが恋人だったなら、自分だって嬉しいだろう。
でも、間違っても恋人ではないし、異性ですらない。
これでうんざりしない方が嘘だろう。
顔がいい人であることは認めよう。声だって、初めて聞いた時は青空から声を直接掛けられてのかと思ったくらい、いい声だ。
そして、いい人…だと思っていた。
その認識は、先日告白された時から少々変わってきていたが。

臨也は告白したときに「君の俺に対する感情をこれからも俺は変えて行くよ?」と言った。
確かに言ったが、きっとこんな風に変えようとは臨也だって思っていなかったはずだ。
もっと甘い意味だったはずだ。
それを望んでなどいないけれど、きっとそうだったはずだ。

それなのに今や、帝人の臨也への認識は「なぜか僕を異常なくらい好きないろいろと残念な人」に成り果てていた。
ちなみに告白する前は「格好いい、凄い情報屋。頼りになりそうな大人の男性」だったのだからいっそ告白しなかった方が好印象だったのではないだろうか。と帝人が考えているほどだ。

「帝人君。今日は何か用事があるのかい?」

臨也が帝人に告白して早1ヶ月。
その間、臨也が告白してきた回数を帝人は数えていない。
1日に1回では済まないから少なくとも60回以上。
「何か用事があるのか?」という疑問については1日1回言っているから、告白してからの日数を数えれば回数も自然とわかる。
しかし、もちろん、帝人は数えてなどいない。
これから数える気もなかったが、ストーカーを訴える時に、被害者の日記って確か物証になるんだよな。じゃあ、日記付けて回数数えてみてもいいかもしれない。と思うほどには臨也をストーカーとして認識しつつある。

「帝人君?何考えてるの?俺のこと?」
「違います」

そこは即答しておく。
実際、考えていたのは臨也の事だが、それを素直に言う愚行はしない。
以前素直に、「まぁ、臨也さんのことと言えば臨也さんのことを考えていましたが…」と言ったら、その場で抱きしめられた。
「帝人君もついに、1日中俺のことを考えてくれるようになったんだね!それは紛れも無く恋だよ!さぁ、今すぐ俺の家に行って愛を確かめ合おう!」
と言って帝人を引き摺ろうとしたことがある。
必死に説得して恋していないとわかってもらった。
折原臨也を毎日待たせているということだけでも学校の人達(生徒・先生両方だ!)から遠巻きに見られていたが、大勢の前で抱きしめられてからますます周りの目が痛くなった。
それについて臨也に帝人は文句をつけたことがあったが、
「他人にどう見られようがいいじゃない。俺は帝人君の瞳に俺が映ってれば満足だし。むしろ、帝人君にちょっかい出す人間が減るなんて万々歳じゃない」
と言われた。
帝人は、普通に平凡に生活して、ちょっと非日常を垣間見れるのが理想だったので、今の状況に満足などしていない。
しかし、臨也に言っても相容れないことがわかったので自分で防御するしかない。
この1ヶ月で学んだことは臨也の扱い方である。
学びたくなかった、学びたくなかったのに。こんなこと。
自然と溜息を吐く帝人に誰が文句を言えるというのか。


「じゃあ、何を考えていたの?」
臨也の目が剣呑としている。
手はコートのポケットに入れられ、折りたたみナイフをいじっている音がする。
ここで、間違って「ちょっと静雄さんのことを…」なんて言ってみたら、きっと池袋で大規模な戦争が起こるのだろう。
イライラしていた時に嫌がらせのために静雄のことを考えていたと言った事もある。
ちなみに、本当にその時は(静雄さんがこの場にやってきて臨也さんをどっかに連れて行ってくれないだろうか)と思っていたから嘘を吐いたわけではない。
そう言った後、臨也は「何それ?シズちゃんなんかが帝人君の思想を独占するなんて許せない。やっぱり死ぬべきだよね。直接手を下さないのが主義なんだけど、それを曲げてもいい気分だよ」と言って凄い速さで走っていった。
あの時は臨也を止めるのに大変な労力が必要だった。
嫌がらせであっても、二度と静雄のことは言わないと硬く決心した。

「大したことじゃないですよ。今日の夕食をどうしようか、買い物がいるかどうか判断してただけです」
そう言った途端、ちょっと寒かった空気が穏やかなものになり、ナイフのシャキン、という音が消えた。
「じゃあ、用事はないんだね?そして夕食の献立も決まっていない」
臨也は嬉しそうに尋ねる。
ちなみに、用事があると言ったら「じゃあ、俺も付いていく」と言うのがいつものパターンである。
「そういうことになりますね。」
「そっかそっか。ところで帝人君。俺は今日、味噌だれの焼き鳥が食べたい気分なんだけど、一緒に行かないかな?」
臨也は帝人の好物を言って、食事に誘う。
帝人は貧乏学生だ。生活費を自分で稼いでいる彼にとって、好物をお腹いっぱい食べられる機会にはあまり恵まれていない。
よって、ここでする返事は1つだ。
「行きます!」
やったぁ、と喜びをそのまま表した笑顔を臨也に向ける。
臨也はそんな帝人を見て、そんな顔をしてくれるなら夕食代なんてタダ同然だよ!と思う。
実際、臨也にとって夕食代を奢るくらい痛くもかゆくも無い。
本当は毎日でも帝人の好きな店に連れて行ってあげたい。
しかし、告白してから4日目で帝人に「毎日奢ってもらうのは気が引けます。それとプレゼントもやめてください」と言われてしまった。
告白した翌日から、帝人にそう言われるまで臨也はプレゼントを持って帝人に会いに来ていた。
そのプレゼントの中身は帝人が欲しがっている物だったはずなので臨也は帝人が拒否する心情が理解出来なかったが、「本当にやめてください。やめてくれないなら、臨也さんに会いません。校門まで待っていても話さないで去ります」と帝人に懇願-臨也にとっては脅迫寸前であった-されてしまってはそれをきかないわけにはいかなかった。
欲しがっている物を知ったのは、帝人を調査している時だ。
帝人が買い物の時に品物を手に取って値札を見て置いた物などを事細かく覚えていた。
プレゼントは受け取りません。と宣言されてしまったため、それからはもう持ってきていない。
しかし、食事に誘うのは毎日でなければいいとお許しが帝人から出されたため、週に3回ほど誘っている。
マナーなどに煩くないけれど美味しい店-特に帝人の味覚に合いそうな店-を調査して、その店で帝人が笑顔になってくれるのが臨也の最近の一番の楽しみになっている。
作品名:ある日の来良学園校門前 作家名:彼方