一緒に帰ろう(AngelBeats!・音野)スパークサンプル
生と死の交差する場所
「貴様、馬鹿だろう」
「手当てしてやった相手への第一声がそれってどうかと思うぞ」
男が目を覚ましたのは昼過ぎだった。
明るいところで見ると髪は黒ではなく紫色をしていて、珍しい色だな、なんて思った。
「……傷、大丈夫か?」
手当てしたといってもせいぜい応急処置といったところで。そもそもナイフで刺された人間の手当などしたことがあるはずもない。
昨日はよっぽど病院に連れて行こうかと思ったのだが、やはり訳ありのようだからまずいだろうと思いとどまった。それに傷は想像より浅かった。だから、病院に行かなかったばかりに死ぬ、なんてことはない、はず。
とはいえ心配なものは心配だ。
「これくらい、大したことはない」
そう言って男は傷口をパシリと叩いてみせた。
……直後、痛みに呻いた。
「お前、馬鹿だろ」
先ほど言われた言葉を返してやる。
それでもまあ、大丈夫そうではあるか。
【生と死の交差する場所】
医者志望の音無さんが怪我していた殺し屋野田君と出会うお話。
自分の目指すものと正反対のところにある野田に、何故か居心地の良さを感じて……
医者になりたいと思ったのはどういう理由からだったか。遠い昔のことのように靄がかかっていて思い出せない。ただ、自分はどうしても医者になりたくて、どうしても誰かを救
いたいと思った。
(悲しい気持ちで死ぬ人が一人でも減るように)
(こうしていたら、いつか)
(会えるんじゃないかって)
――誰に?
作品名:一緒に帰ろう(AngelBeats!・音野)スパークサンプル 作家名:とち