セオリー(短編集)
もしヒロインならこう言うわ
「高校のときやったもん、ロミオとか」
「ロミオ?」
「ロミオ」
「ジュリエットじゃなくて?」
「あー、なんか企画した子がね、どうせならちょっと変わったことやろうよ、って。それで男女逆転することになっちゃって」
「それで武藤さんがロミオだった、と」
「ん。ジュリエット役がさー、結構イケメンの男子だったんだけど、それでも似合ってなくてかなり笑えたっけ」
「結城くんとかは似合いそうなものだけど」
「あー駄目駄目。あの子綺麗だけど日本人!って顔じゃん」
「じゃあ武藤さんがやってみます?」
「え、いいの?!」
「そっちなら付き合いますよ。楽しそうだし」
「よっし、んじゃあ、えー……おお、ロミオよロミオ。あなたはどうしてロミオなの?」
「お母さんが付けてくれたから」
「……葉月ちゃんってさ、意外に定番ネタとか好き?」
「ロミジュリも十分定番ですよ」