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小さな花~白詰草~

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「カミュち、早く~」

 花冠を頭にのせたアルルゥが、後ろに続くカミュを振り返り、その場でもどかしそうに足踏みをする。

「アルちゃん、そんなに急がなくても大丈夫だよ。
 おじ様、まだお仕事してるはずだから」

 頭にのせたお揃いの花冠を、落とさないように気をつけて走り寄るカミュ。

「ん」

 そんな事は知っている、と短く返事を返すアルルゥ。
 急ぐ必要も、探す必要もない。
 この時間、いつも父は書斎に閉じ込められているのだから。
 そうわかっていても、走らずにはいられないのは……今日の花冠が、とっても綺麗に出来たからだろう。
 どんなに気を使っても、だんだん歪んでくる花の列。それが今日はまっすぐ外を向いているし、太さも均等。一番難しい仕上げも上手くできた。
 これを早く父に見せてあげたい、綺麗に出来たと一緒に喜んで欲しい。花冠を渡すぐらいの少しの時間なら、うるさいベナウィも見逃してくれるだろう。
 そう思うのは、無理のないことかもしれない。
 それぐらいの会心作だ。
 隣に追いついたカミュの、呼吸が整うのを待っている間も惜しい気がして、アルルゥは再び歩き始めた。

「カミュち~」

 早く来ないと先に行く、1人で父に褒めてもらうと何度も何度も振り返る。

「あ。アルちゃんズルイ!」

 2人で作った花冠だ。褒められる時は2人一緒でなければ、不公平。
 先を行くアルルゥに追いつこうと、カミュが走り出す。

「きゃっほぅ! カミュち、競争。
 どっちがおと~さんの所に早くつくか」

 頭を飾る花冠を落とすまいと胸に抱き、アルルゥも走り出す。

「よぉ~し、負けないよ~!」
作品名:小さな花~白詰草~ 作家名:なしえ