小さな花~白詰草~
赤く染まった太陽が、ゆっくりと西の山に姿を隠しはじめた。
遠くの空で、鳥の親子が鳴きながら山へ帰って行く。
結局、家族全員分の花冠を作ったアルルゥは、疲れ果てカルラの膝を枕に安らかな寝息を立てている。時折耳をくすぐるカルラの指に、ぴくぴくと耳と尻尾を動かしているが、昼間ほど元気には揺れていない。
「出来た!」
突然の歓声にアルルゥは目を覚ます。
「アルルゥ殿、出来ました!!」
何度も作り直した中でやっと出来た、なんとか花冠に見える物をアルルゥの目の前に差し出す。
まだ眠たそうに目をこすっているアルルゥは、差し出された花冠とトウカの顔を見比べた。
「…………」
「……アルルゥ殿?」
お世辞にも綺麗とは言えない花冠は、最初に自分が作ったものよりも不格好。それでも、トウカの花の汁で緑色に染まった指先や、土で薄汚れた顔を見ていると……『ゴミ』と言われた事も、花冠を壊されてしまった事も、すべてどうでも良く思えてきた。
「…………不格好」
これは、素直な感想。
ほんの少しだけ、仕返しの意味もあるかもしれないが。
「でも、アルルゥ、これがいい。トウカお姉ちゃんが作ってくれた、アルルゥのかんむり」
アルルゥの言葉に、トウカはほっと息を吐く。
これでやっと仲直りできた、と。
「ん」っと頭を出すアルルゥに、トウカは瞬き、うやうやしく花冠をのせる。
微かに加わった頭の重みを確かめるように、そっと花冠に触れるアルルゥ。
「トウカお姉ちゃんの分」
アルルゥは家族分の花冠の中から、2番目に綺麗に編まれた物を取り、トウカの頭にのせる。
「某にも、ですか? ありがとうございます」
「ん、1番綺麗なのはおと~さんにあげる」
だからこれは2番目に綺麗な物だ、とアルルゥはトウカに微笑んだ。