月の影を越えてゆく
あれは偽りが許される唯一の日。
闇を弾く白の罪状は、誰にも知られることはなく、赦される日も来ることはない。
痛みを振り落として羽ばたいた空に、花が咲いた。
力を奪われた小さな手が夜に咲かせた、偽りの花。
どんな星より輝く、何者にも奪われなかった青。彼が名乗ったたった一つの称号。
どんな暗い夜だって、偽りを抱いて飛べる。この白の誇りと共に。
出会った夜。
全てが偽りに覆われた俺たちの、それだけが真実だった。
残像は鮮明に、いつまでも美しい。
一人闇の中を駆けていくことになっても、きっと一生消えない宝物。
走れ。失わないために。
そして、白い魔法使いは、始まりの場所に降り立つ。
身を起こしたその足元、不敵に笑う小さな影を確信して。