誓い
1.
――ずっと一緒にいてください。
いつかどこかでみたワンシーン。
ドラマか映画かあるいは現実にあったことなのか、ガキのころに見たそれは、ずっと心の片隅に残っている――
その日、私、黒崎真冬は夕飯を作り終えて、汚れと疲れを落とすべくお風呂に入っていた。
少し熱めのシャワーが気持ちいい。
多少指先に傷は増えたが、いままでしてきたケンカにしてみればたいしたことじゃない。
それに今回のご飯はうまくいったのだ。
こないだの休みに実家に帰った時に母さんに料理を習ってきて、今日初めてそれを実行に移したのだった。
結果はまあまあの出来だ。
作ったのはカレーライス。
ほんとは和食を習いたかったんだけど、まだ早いといわれて味付けに特に大差がないカレーを教えてもらったのだった。
加えてちぎったレタスやざくぎりにしたトマトとスクランブルエッグを混ぜたサラダ。
ドレッシングは市販のものだから安心。
なんにもできなかった自分がここまでできるようになるとは我ながら大進歩だ。
自然と鼻歌なんかが出てくる。
「~~♪ ん?」
鼻歌をやめて耳を澄ます。
いま一瞬物音がしたような気がしたのだ。
シャワーをとめて、意識を集中させる。
――ガタガタン!
今度は聞き間違えることなく音が聞こえた。
私はバスタオルを巻きつけ、そっと音をたてないように浴室のドアを開ける。
間の悪いことに着替えを持ってきていない。
今日は玄関のドアは閉めているはず。
だけど確か窓は開いていた。
……泥棒?
いや、こんな人がいるとわかるとこには入らないだろーし。
――となると……あとは一人しか予想できない。
私はそっと足音を忍ばせて音のしたところ――台所を覗き込む。
「……ちょっと何してんの鷹臣くん」
脱力して座り込みそうになる自分を抑えて尋ねる。
「あ? みりゃわかんだろ。飯くってる」
人の夕飯を勝手にな。
そこでは予想通り私がメモを片手に奮闘してつくりあげたカレーを隣の魔王陛下がバクバクと食べていた。
「つーか鷹臣くん、どっから入ったのさ」
「窓から。帰ってきて腹減ったからどーしよーかと思ってたらお前のうちからカレーの匂いがしてきたから」
どこまでも傍若無人な。
「うめーぞ、このカレー」
「ほんと!?」
その言葉に思わず嬉しそうな声がでた。
お世辞などは絶対にいわない鷹臣くんが言うんだから間違いない。
顔がにへらと緩むのが抑えきれない。
気分がいいので、冷蔵庫からサラダもだして並べる。
「はい。これはサービス。こっちはこのドレッシングかけて食べてね」
「ん。サンキュ。
……ところで真冬」
「何?」
「その格好も俺へのサービスか?」
ニヤニヤと笑いながら鷹臣くんの視線が私の上から下まで撫で上げた気がした。
今の自分の格好を思い出す。
バスタオル一枚。
血が音を立てて顔に上った気がした。
「~~! 鷹臣くんのバカ~っ!