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いただきたい

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 ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ・・・・

 「ん・・・。」

 不躾に鳴り響く端末音を頼りに枕元を手探った。
 直ぐに見つかった携帯を引き寄せ、片目で小さな画面を見ると可愛い弟の表示。
 これがヒゲやトマトだったら無視できるが、ヴェストからとあっては出ない訳ない。
 
 「もしもし?」
 『・・・まさかと思うがまだ寝ていたのか?』
 「いいじゃねぇか。てかお前今どこだ?今日は休みだって言ってたろ?」
 『それが今朝方洗濯物を干している時に急に上司に呼び出されてしまったんだ。
  それで・・・』

 今日は買い物とか掃除とか一緒にするって言ってたのによ・・・。
 優秀で真面目な弟は俺の自慢だがこんな時困る。
 上司の招集は最優先で行っちまうし、サボるなんて考えは毛頭無い。
 何でもよく出来るからあちこちから要請がかかるのなんて日常茶飯事だ。
 別に寂しいってわけじゃ無いけどよ・・・。

 「もうちょいお兄様にも構えよ・・・。」
 『?何か言ったか?』
 「何でもねぇよ。それで?用事は何だ?」
 『あぁ、呼び出されたのが早くだったからブラッキー達の散歩がまだなんだ。
  機嫌を損ねさせる前に行ってくれないか?』

 俺の機嫌が損なわれるぞ。

 「おぅ、お兄様に任せとけ。」
 『すまない。ありがとう、兄さん。』
 「仕事あんま無理すんなよ。」
 「ja」

 また駄目になっちまったな、休み。
 通話を切るとなんか虚しくなって暫くゴロゴロと枕と遊んだ。
 でも愛犬たちに罪は無い。
 あるとしたらヴェストを走りまわさせる仕事だ。

 「おし!」

 よくよく考えればいつもの事だ。
 ベッドから跳ね起きるとシャワーを浴びて着替え、早速犬小屋に向かった。
 3頭ともリードを持った俺を見ると「早く早く!」と言う様に擦り寄ってくるが
 無駄に暴れる事は無く、難なくリードをつけることが出来た。流石ヴェストの躾。
 今日はとことん遊んでやるぜ!
 くきゅむ、と小さく腹が鳴った。
 が、もう昼に近い時間だし、飯は朝と昼兼用で食えばいいだろう。
 はしゃぐ3頭を引き連れ、足取りも軽く公園へと向かった。






 「っはー!久しぶりに遊んだな!」

 散々愛犬たちと駆け回った後、芝生に大の字で寝転んだ。
 動きやすいように、と選んだジャージの粗い布目から芝生の感触が伝わってくる。
 ちくちくして少しくすぐったい。
 大きく伸びをして目を閉じた。
 過敏になった聴覚が色んな音を拾ってくる。
 草木を凪ぐ風の音。
 静かに紡ぐ老人の声。
 涼しげに散る噴水の音。
 楽しそうに笑う子供の声。
 仲間と談笑する若者の声。
 優しく子の名を呼ぶ親の声。

 「平和だ・・・。」

 俺が国だった時の民にもこんな安らかな時間を作ってやりたかったな。
 なんか妙におセンチな気分に浸っちまってると
 ベルリッツが傍に投げ出した荷物をフンフン嗅ぎながら俺を見つめた。

 「悪ぃ悪ぃ。腹減ったよな。」

 今日はヴェストが《特別なご褒美》と称している高級犬用ジャーキーを持ってきた。
 こいつらだってほったらかしにされてんだ。これ位の贅沢は許されるよな?
 一心に干し肉に噛り付いているのを見てると、俺も腹が減ってきた。
 丁度休日の公園、しかも昼時という事もあって公園には可動式の露店が点在している。
 とりあえず腹の膨れるものを、と近くにあった店に寄った。
 店の親父と天気やら景気やら話しつつ、大きなヴルストが挟まったパンを受け取る。
 ホカホカの湯気が立つ昼飯は簡素だが実に旨そうだ。
 たっぷりかけてもらったマスタードが垂れない内に。
 と食物への感謝を口にし、いざ齧り付こうとした時だった。
 シュバッ!!!黒い影が俺の昼飯を掻っ攫いやがった!!!

 「な・・・!!!」

 気配も何も感じなかった。己何者だ!!
 通り過ぎた方を向くと片目に傷を負った野良犬がこっちを振り向いていた。
 その犬と思えぬニヒルな口には俺の昼飯。
 本来刺激物は苦手だろうがそいつは平気な顔してマスタードごと平らげ
 ゆっくりとした動作で余裕にも口元に付いたチリソースも舐め取った。
 突然の襲来。余裕綽々の犬。昼飯の消失。
 この3拍子に動けなくなっていた俺は呆然と野良犬の後姿を見送った。

作品名:いただきたい 作家名:akira