いただきたい
あの後、疲れていたヴェストは風呂に入ってソッコー寝てしまった。
「今日はすまなかった」だの「明日は必ず」だのずるずる言ってたから
俺が風呂に押し込んだんだけどな。
「さてと。」
まったく、期待を裏切らずに買ってきてくれちゃってよぉ♪
断りを入れずに手を付けるのはちょっと悪い気がしたが、寝てんだし仕方ないよな。
俺はさっそくリビングのテーブルに土産の紙袋を乗せ、がさがさやっていた。
厳重に包まれているせいでなかなか中身の把握が出来ない。
でもさっきから甘い匂いがしてるし、いいものに変わりは無い。
ヴェストからの土産ではずれた事はないのだ。
包装が取れ、机の下は大惨事だが俺の目の前には黒い、お高級そうな箱がある。
色的にチョコとか菓子とかの類だろう。
甘い匂いが腹を直撃し、腹の虫は歓喜に震えている。
「・・・いただきますっ・・・!」
いつか菊に教えてもらった食への感謝のポーズを取り、そっと箱の蓋を取った。
超お高級なメープルシロップでした。
いや、嬉しいぜ?嬉しくないとかないんだけど。
「何故よりによって、こんな時に限って液体・・・!」
今日は是非とも固形物が良かったぜ・・・。
流れてくる塩水を拭えないほどの脱力を感じながら、大人しく寝室へと引っ込んだ。
もう今日は食いモンにあり付けるチャンスはないだろう。
明日の朝食まで・・・いや、冷蔵庫の中に何もなかったんだから買出し行くまで。
いや、その前にほかりっぱなしのリビングの片付けと散歩か・・・。
「もぅ知らん・・・。」
頭まで毛布を被り、早く睡魔が来る事を願った。
俺様の空腹はまだまだ続く。