いただきたい
そして現在に至る。
いっその事ドッグフードを失敬してしまおうかと思ったけど・・・。
万が一バレた時のヴェストの目を想像してしまい、恐ろしくて出来なかった。
おやつジャーキーも同じ理由で諦めた。
諦めるまでに何かいろいろな物と戦った気がする。
「早く帰って来いよ・・・。」
出来の良い弟は一人で遠出する時、必ず土産を買ってきてくれる。
それは出先の特産品だったり、名物だったり、俺の好みそうな食い物である事が多い。
店の殆どが閉まっているこの時間帯、最後の望みは
ピピピピッ ピピピ/
「もしもしっ!」
『ぅおっ!・・・どうしたんだ?兄さん。』
「ん? ぇ いや、何でもねぇ。お前こそどうしたんだよ。」
『あぁ、会議は終わったのだが道が込んでいて遅くなりそうなんだ。』
お そ く な る 。
マジかー・・・。
でも携帯使えるようになったならやっぱデリバリーを・・・あ、閉店してるんだっけ。
改めて襲い掛かってくる空腹が戦意を失っていた腹の虫を鳴らす。
憐れ弱弱しい合唱が半べその俺の耳に・・・届かなかった。
『それでうちの一番早い戦闘機を私用で使ってしまったんだ。』
「え・・・。」
『パイロット付だったし、何より理由が【帰宅】だ。
明日上司から苦情の電話が来るかもしれないから』
「ヴェスト・・・!?」
声がやたらと近い。それに帰宅で戦闘機で苦情?
「使ってしまった。」って過去形だよな?
チカチカと微かな音を立てて電気がついた。
落ちたままだったブレーカーを上げたんだろう。
中のヒューズが飛んでなくて助かったぜ。
・・・ブレーカーを上げた?誰が?
誰って、ここの鍵を持ってんのは、俺と・・・。
落ち着いた足音が聞こえる。それは次第に大きくなり、俺の後ろの扉で止まった。
ワンテンポ置いて開く。
『早めに買い物に行ってやり過ごさないか?兄さん。』
携帯片手に微笑むスーツ姿のヴェストに後光が見えた。
ぶら提げている重そうな紙袋ごと輝いて見えた。
カッチョ良すぎるぜ弟よ!
「お帰りヴェスト!いつ帰ったんだよ!」
「ただいま兄さん。今さっきだ。」
嬉しくて、安心して、カッコよくて何かよく分からなくった俺は
とりあえずヴェストに飛びついた。