ささめゆき
だが。
それでも。
「銀時」
桂は口を開く。
「俺はおまえが行かなくても戦場に向かうつもりだった」
口から出てきたのはそんな台詞で。
すると、銀時の顔がほんの少し明るくなった。
桂は堅い表情を崩さずに、さらに言う。
「おまえが行くから俺も行くのではない。俺は時機を待っていただけだ」
そう主張したのは、ぎりぎりの意地だった。
自分の思考を放棄して、ただだれかについていきたいからついていくというのは、今まで生きてきたなかで培ってきた誇りを傷つけることだ。
それに、松陽の仇を討ちたい、今の間違った世を正すために戦いたいという強い想いは自分のなかにもともとあったもので、銀時に影響されたわけではまったくなかった。
だから。
「これは俺の意思だ。勘違いはするな」
桂は銀時の眼を真っ直ぐに見て、きっぱりと告げた。
眼を見返してくる銀時の口元がかすかに緩む。
「わかってる」
そして、桂を引き寄せる。
「本当にわかっているのか」
「あー、わかってる、わかってる」
「なんだそのいい加減な返事は。信用ならん」
文句を言いながらも、桂は自分の背にまわされた銀時の手をふりほどこうとはしない。
銀時の肩越しに部屋の隅にある長火鉢を見えた。