レイン
***
わかってる。ただ思い出しただけだろう?
そう笑って問い返せば良いだけなのに、何故だか言葉が続かなかった。
「違うんす、俺、そうだったらいいって」
思って、と、消え入りそうな声で俯いたままの静雄に、トムは確信めいたものを感じる。
確信?
一体何のだ。
自問すると同時に、答えは出ていた。
自分のなかの、消しきれなかった感情。
静雄の赤く染まった耳。
「悪い。おまえの言う通りだ」
「え……?」
驚いたように上げた静雄の、意味をはかりかねて困ったような、泣きそうな顔。
視線を合わせる。
「マジで、おまえが帰らなきゃいいって思ったよ」
信じられないものを見たように、静雄の目が僅かに大きくなる。
「今も。あの時も」
「トム……さん……?」
雨の音が、また強くなった気がした。