酒の中に真実あり
「聞くって何をですか?!」
「だって、あたしが知る限りでも、ゾロが女子供に力を誇示したなんてないんだもん。」
「そりゃ、ナミさんがいらっしゃらないときだったり、機会が無かったりしただけじゃ・・・」
「・・って、サンジくんは今までのあのゾロの強い奴にしか反応しない態度を見て思うわけ?
言っとくけど、アイツ、たとえばあたしなんかには全く意識がむいてないわよ、弱いから?」
「・・・・・こんなとびっきりの美女を前にして、それはそれで失礼千万ですけどね。」
「ほら、サンジくんだってわかってるじゃない。
だからさ、なにかあると思うのよね、言いたくないような、何か秘密が。」
「って仰ると?」
ナミはニヤリと不吉を予感させる笑みを浮かべる。
「酒の中に真実あり、って諺、知らない?」
それで始まった飲み比べだった。
主催はナミだが、それはサンジのためで。
だからこそ、サンジは細々と酒を運び、ツマミを用意したのだ。
「サンジくん、ツマミ有難う、ね。あたしはもう寝るわ。お休み。」
「ナミさん、大丈夫ですか?肩でも貸しましょうか?」
「へーきへーき。あ、片付けはいいわよ。これだけ呑んだの、ゾロ一人の所為にしちゃいましょ。」
ニヤ、と笑んでウィンクする顔は女狐というか悪魔そのものだったのだが、いかんせんラブなコックには全くその姿は天上の女神にしか見えない。
酒に酔った顔よりよっぽど真っ赤になって、甲板にぱたりと倒れたのは、ナミが扉を閉めると同時。
翌朝まで発見はされなかったというのは後日談だ。
ばたん、と女部屋に入ったナミはそのままドアに背中を預けると、ずるずると座り込む。
片手は額を抑えて目を閉じている。
「うー、きっつぅ。流石に呑み過ぎたか。けど女として男相手に酔いつぶれるわけには、ねぇ。」
などと言いながら、そのまま意識が遠のいた。
翌朝には、事態にずるいずるいと騒ぐルフィに、うるせえ!と怒鳴りながらもその怒鳴り声で二日酔いの頭を抱えた甲板磨きをするゾロの姿があったというが、あいにくナミは眠り続けて見逃した。
ちょっと勿体無かった。
酒を常にすること無かれ。『書経』