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関係変化

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(ああ、絆されている。)
(きっと絆されてきてくれている。)

最近、帝人と臨也の二人の間にはそんな空気が流れている。
臨也が帝人に告白をして数ヶ月。
毎日の臨也の告白は続いている。
その返事も最初から何も変わっていない。
帝人はお礼と「嫌いではない」と言う。
告白の返事は変わっていないが、つい最近、臨也は帝人が自分に良い感情を持っているような空気が感じられるようになった。
その空気が醸し出されたのは、夕食を帝人の家で取ることが普通になってきた日あたりが境だったように臨也は思っていた。

最初、帝人が臨也を家に誘ったのはなんてこと無い日だった。
夕食をどうするか決めようとした時に帝人が「僕の家でどうですか?」と誘ったのだ。
「どうしたの?帝人君」
と聞くと、帝人は何てこと無い風に
「母から食材がたくさん送られてきたんです。週の半分も夕食代を奢ってくれている臨也さんに普段のお礼を兼ねて、食べさせてあげたいなと思いまして」と言った。
そんな帝人の誘いを臨也が断るわけも無く、感激しながら帝人の家に着いていった。
その日から帝人の夕食は、一人で家で食べる、臨也と外食するという今までの2種類のパターンから臨也と二人で家で食べるというパターンが加わった。

そんな日々を過ごしていたが、帝人は臨也に恋をしたわけではない。
ただ、臨也の隣にいることが嫌だと感じることが無くなった。
むしろ、居ないことが不自然に思えるほどにはこの関係は育っていた。

帝人が臨也に絆されている、と感じたのは臨也がそれを感じるよりも数週間前だった。
初めてそれを感じたのは、居ないことが不自然。ということを感じた時と同時だった。

不自然に思うことに帝人が気付いたのは、臨也が帝人の前に3日間現れなかった時だ。
恋愛では、駆け引きに『押してだめなら引いてみろ』というのがある。
この3日間は、臨也がそれを実践したわけではない。
本当に、どうしても外せない用事が入ってしまったのだ。
帝人との時間を最優先事項にしていた臨也だが、情報屋を続けていけるか否かレベルの用事が入ってしまったらしい。
「帝人君。4日間…いや、3日でなんとかする。…3日間帝人君に会えないんだ。」
悲痛な顔をして、臨也は帝人にそう告げた。
あまりにも悲痛な顔をして告げてきたから帝人は「なんだ、そんなことですか」と拍子抜けした。
その言葉を聞いた臨也は「そんなことって何!?俺は帝人君に3日も会えないなんて、考えるだけで恐怖だよ!」と言った。
3日会えないくらい、どうってことはない。
帝人は強がりでもなんでもなく、本当にそう思っていた。
それなのに、臨也が居ない1日目に校門近くのいつも臨也が待っている場所をふと見つめ、立ち止まっていたところ、杏里に「どうしたんですか?」と聞かれた。
その時、周りは臨也がいないことに疑問を持ったようで帝人を遠巻きに見ていた。
本人、近しい友達、ただの同じ学校の生徒。
全員が毎日そこに居た人がいないことに対して違和感を感じている。
大勢が感じていた違和感だが、それが一番大きかったのは待たれていた本人だった。
そして、その本人である帝人はその違和感を感じたことに驚愕していた。
毎日毎日、(今日も居る…)と呆れていたのに。
その感情は嘘偽りの無いものだった。それなのに校門前に臨也が居ないことに違和感を感じ、そして、少し寂しいと感じた。
いつもの「帝人君!」という笑顔が見れないことが残念だと思った。
帝人は、自分が臨也からの好意に無自覚だが、優越感を持っていた。
そんな色々な感情がその3日間で浮き彫りにされた。
3日経てばまた会えることがわかっているのに。
携帯電話にメールは変わらず受信を続けているのに。

この帝人の感情を臨也が知れば、喜び舞い踊ったかもしれない。
信じられずに、硬直したかもしれない。
しかし、臨也は気付かなかった。
帝人が気付かれないように過ごしたからだ。
人間観察を欠かさず、人間の感情の機微に聡いはずの臨也に気付かせない。
それは本来、かなり難しいことのはずだが、臨也はその聡さを帝人に限り十分にいかせなかった。
変なフィルターを通して帝人の感情を読み取ろうとしてしまうためだ。
だから、臨也にとっては残念なことに、帝人にとっては安堵することに、帝人の浮き彫りになった感情(あくまで恋ではない)を臨也は気付かなかった。

そんなことがあってから約1週間後、帝人は自然に臨也を自宅に誘っていた。

それからまた1ヶ月ほど経ってから、臨也は自然と帝人の家で夕食を取れるようになり、帝人が自分に絆されてきているのではないかと思うようになった。
毎日の告白-全て本気であったが-ではなく、奮発したレストランかどこかに誘って、告白をして交際を申し込むべきだろうか。と臨也は悩むようにもなってきていた。
少しずつ勝算が上がってきていると感じていた。

そんな微妙な雰囲気が流れる二人の間。
その空気を壊す出来事が起こった。

作品名:関係変化 作家名:彼方