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関係変化

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「正臣?」
二人で買い物に行って、帝人の家に帰る途中、帝人はそう呟いた。
驚愕に目を見開いた帝人の視線を追うと、そこには、明るい茶パツでパーカーを着た、170cmくらいの人物が居た。
しかし、横顔がちらりと見える。その顔は帝人の幼馴染で親友のものではなかった。
帝人の溜息は大きかった。
それでも彼と見間違った人を見続けている帝人を臨也は見つめる。
そして、臨也は彼の心を支配している彼のことを思う。
大事な弟、と偽ったかつての駒。
彼は似た後姿だけで帝人を支配する。

帝人は自分が正臣に持っている感情は友情だと感じていたし、これから先も変わらないと確信している。
しかし、臨也はそうは思わなかった。
思うのは、彼への帝人の執着心の異常さと盲目的な信頼への嫉妬。いらだたしい。

臨也は特別な親友など持ったことが無い。
だからわからない。
帝人の正臣への感情が理解できない。
臨也は特別な人間など、帝人しかいない。

自分のイライラを隠して、平静を装いながら、臨也は帝人に聞いた。
「帝人君はさ、紀田君のことが好きなの?」
その質問を受け、帝人は見間違った彼から目線を臨也に移した。
表情は先ほどとあまり変わらない。
つまり、驚いている表情だ。
それから、少し考えるような動作をして顔を赤らめて質問に答えた。
「そりゃあ、好きですよ。当たり前じゃないですか。」
照れているようで嬉しそうな顔をして、本人には言わないですけどね。と付け足す。

あまりにも簡単に帝人は正臣のことを好きだと告げた。
この何ヶ月か、毎日告白している臨也に対して、帝人は一度も好きだとは言ってくれたことは無い。
ただ、嫌いじゃないですよ。と告げるだけ。
それは、微妙な雰囲気が流れ出してからも変わっていなかった。

それなのに。
そんな帝人が簡単に好きだと言う。
こんなに帝人が好きでたまらない臨也に向かって。

帝人は気付かない。
そのことでどんなに臨也の心を乱しているのかを。
だから、正臣の話を続けてしまう。

「正臣に早く会いたいな。絶対、僕の所に帰ってきてくれるって信じてるんですよ。あ、臨也さん。絶対、僕が正臣のことを好きだって言った事内緒にしてくださいね?
そんなことされたら、僕…うわぁ、想像するだけで恥ずかしいです」

顔を赤く染めて帝人は話し続ける。正臣への想いを。
その内容も、帝人の表情も全て臨也の心を黒く染め上げていく。
黒く黒く黒く。
いつも臨也が着ている服よりも漆黒に。

「正臣、今頃何してるんでしょうね?あの寒いジョークも聞かなくなると寂しい…なんて。僕、本当に正臣が好きなんですね」

その言葉で臨也は限界を迎えた。

帝人を脇道に無理やり連れて行き、壁と帝人の手首を臨也の手で縫い付けた。
そして、唇を唇で塞いだ。
帝人を見ると、眼に涙を浮かべている。
きっと、今の彼には幼馴染のことなんか頭のどこにもない。

俺でいっぱいだ。俺のことしか考えられないだろう?
いつもそうでいて欲しい。
だって、俺はいつだって帝人君のことでいっぱいなんだから。
君だって、そうあって欲しい。

唇に痛みが走る。
口内に鉄の味。
ああ、噛まれたのだと気付く。
でも、離したくない。離してなんかやらない。放してなんかやれない。
そう思っていたけれど、今度は足に衝撃を受ける。
思わず唇を放し、手を放した。

それと同時に臨也は突き飛ばされて、帝人は駆けていった。
臨也の方が足は速いし体力もある。
帝人の行き先も、きっと自宅だとわかっている。
しかし、臨也は帝人の後を追わなかった。
今、追って行ったらきっと、いや、確実に臨也は帝人を犯してしまう。
日常的に静雄と喧嘩している臨也はダテではない。
帝人がどんなに嫌がっても押さえつけて自分の欲望をぶつけてしまう。

それがわかっているから追わなかった。
犯してしまえば、決定的だ。
この関係が終わってしまう。

追わないことが臨也の残った理性を総動員した結果だった。


作品名:関係変化 作家名:彼方