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関係変化

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「臨也さん」

背後から声がする。
また振り返るのが怖くなった。
本当に振られるのではないだろうか。

「臨也さん。こっちに来てください」

言葉を返すことが出来ない。振り向くこともまだ出来ない。

「臨也さんはまだ、僕が何に怒っているかわからないんですか?」
そうだった。さっきまで疑問に思っていたのに『振る』という言葉に反応して忘れてしまっていた。
「人に悪いことをしたと思ったら、普通はどうするんですか?」
…ああ、そうか。
意を決して、帝人の前に立つ。
目線を下から帝人の目へと移す。

「ごめんなさい、ごめんね。帝人君。本当にごめん」

人にこんなに素直に謝ったのは初めてじゃないだろうか。
他人を怒らせるようなことなら数え切れないほどした。
でも、許して欲しくて心から謝ったのは初めてだ。

「はい。許します。これからは逃げないでください」

そう言う帝人は笑顔だった。

「許して…くれるんだね」
「はい。謝りに来るの待っていたんですけど、一向に来ないのでそれには怒っていましたが、キス自体はその日のうちに怒りは無くなりました」
逃げたのだって、怒りよりも驚きの方が勝っていたと思いますよ、と帝人は言った。
「会いに行けなくてごめんね。君にはっきりと拒絶されるのが怖かったんだ」
一度謝ってしまえば、素直に言葉が出てくる。
「キス、怒らなかったんだね」
「そうですね。臨也さんが僕のこと好きだってことは理解してるつもりです。いつも僕の唇見てたのは気付いてました。それと、臨也さんが嫉妬深い人だってことも。
だから、あの行動に出ても仕方ないかな、と」
「え。え?俺、唇見てたって何?」
帝人はきょとん、とした顔をする。
「あれ?無意識だったんですか?」
帝人が嘘を吐いているようには見えない。
うわぁ、恥ずかしい。と臨也は顔を赤くした。
そんな臨也とは対称的に帝人はすぅ、と深呼吸をしてから臨也の眼を射抜いた。

「臨也さん。僕は正臣のことが好きです」

帝人は臨也にとって残酷なことをまた告げる。

「それは、俺を本当に振ってるの?」

好きだと言っている人間に他の人が好きだと告げる。
それは、告白を断っているのに他ならない。
でも、仕方が無いことだとも思う。
本当に悲しいけれど、胸が張り裂けそうだけれど、受け入れるしかない。

「臨也さんは友愛だとか、そういう好きもあるってことを知るべきです。好きだからといって、それが恋愛感情であると決め付けないで下さい。僕と正臣は親友なんです。
好きに決まってるじゃないですか。でも、その好きは友情の枠を出ないんですよ。あくまでも、親友は恋人にはならないんですよ。すごく好きですけど。すごく大切ですけど、友情なんです」

「友愛、友情」
臨也は帝人の言葉を反芻して呟く。
「ええ、僕の正臣に対する好き、は友愛です。もちろん正臣から僕に対する感情も」

「俺の好きは恋愛だよ」
そう言う臨也は真剣な目をしている。
帝人はそれを面白く思う。
「知ってますよ」
それこそ今更だ。知っている。そうでなければ、親友に嫉妬してキスするなんてあるはずがない。

二人は何も言わずに見つめ合う。
その沈黙を破ったのは臨也だった。


「帝人君。好きだよ。この世で一番。君のことしか考えられない。俺と付き合ってください」


こんなに人に懇願するのは初めてだ。
無神論者の俺だけど、今だけなら神に祈ったって構わない。
そんな必死な俺と対称的に帝人君はふむ、と余裕がちに指を顎に当ててから微笑んだ。

帝人は臨也に対する感情は恋じゃないと思っていた。
でも、キスされてもすぐに許してしまった。謝りにさえ来ない男なのに。
そして会いに来ない臨也を苛立たしく思った。
波江から会えるきっかけを貰って、それに飛びついた。
嫌でも自覚する。
どうしようもない男に捕まってしまったことを。

そして告げる。これからの関係を変える言葉を。


「臨也さん。キスしたかったら、しても構いませんよ」


それを聞いて臨也は笑い出す。さっきまでの緊張が嘘みたいだ。
「アハハハハ。帝人君。君がキス、したいんじゃないのかい?」
なんで帝人君は俺が思ってもみないことを言うことが出来るんだろう?
だから愛してる。どうしようもなく好きだ。
「臨也さんはしたくないんですか?」
どこまでも帝人には余裕があるように見える。
ああ、もう。そうだよ、俺は君に夢中だよ。いつだってキスしたいって思ってるよ。俺の完敗だ。
臨也は帝人に抱きつく。


幸せを噛み締めながら帝人に許しを貰った行為をひとつ。
微笑みあってふたつめ。

いつか普通の告白をして貰おうと、「好き」と言って貰おうと臨也は決める。

その臨也の願いが叶う日がいつ来るのかはまだ誰も知らない。

しかし、二人の関係が恋人というものに変わったことは二人だけが知っている。
作品名:関係変化 作家名:彼方