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鳥獣たちのサンサシオン プレビュー

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よく考えれば、体感とはふしぎなものだ。触って確かめる。やけに確実な気もするが、実際はあやふやで二度と再現することはできないし、一瞬もとどめておけない。本当にあったことなのか、本人以外にわかるものはいない。覚えているものもない。
 なのに、信を寄せるのにあんなにも抵抗のないものが他にあるだろうか。
 生理的な接触をふくむ直感。ただ、なんとなく。そうとしか説明できないこと。その堅くなさ。理由をもたない理屈のほどける処はみあたらない。
 
 
 
「ひ、人通りのない道だけでじゃぞ!大通りに出る前にちゃんと離すのじゃぞ!」
「うん、わかってる」
 にこり、と笑って返答すれば、ふい、と白に顔を背かれてしまった。つい、顔の緩みすぎた自覚はあった。だが、自分の至らなさを苦く思う前、ほんの一瞬の逡巡ののちに、繋いだ手が強く握りかえしてくれる。固くきちんと結ばれたてのひら。言葉のない肯定が嬉しく、七代の顔はますますみっともないことになった。気配でそれが伝わったのか、道を歩くあいだ、白は決して七代の方を向こうとしなかった。白い髪のあいまにのぞく、耳の端はあたたかく照っている。 
 同年代よりもざらざらと皮の厚い七代の掌に、白の人形めいて華奢なやわらかい手は、あつらえたようにぴったりと寄り添う。不釣り合いということはない。たぶん、どちらにとっても。
 あと二つの角をまがれば、人通りの多い道に出る。何時もそのタイミングで、白はきゅと手に力を込める。おそらく本人にその意識はない。七代に頼まれぬかぎり、自分はこの手を繋ぐ必要などないと、彼女はそう思っている。
 だが、ちいさな桜貝の爪がついた指はいま、白の幾年も続いた、役目を遂行することを絶対として義務づけられた、その強固な理性を裏切っている。
 可愛くて可愛くてしかたがない。こういう時、七代はいっそもう白を頭からのこさずぜんぶ食べてしまいたいと思う。それができればどんな味がするだろう。どれほどの砂糖をかけた菓子よりあまく、だが決して優しいばかりではなく、ぴりりと舌を刺す一分を残す。きっと、そんな味ではないだろうか。
 想像すれば我慢は効かず、七代は素早くかがんで唇をよせた。
 口づけの落ちた先が額であっても、突然のそれは白にはもちろん我慢ならない暴挙である。
 七代は路上で十五分を超える説教をくらった。