Be Conscious その①
早く、早くと焦る気持ちが俺を急き立てる。顔に打ちつける雨が、時折目の中に入るが、両手が弟を抱きかかえているせいで塞がっている。目を細めて、少しでもそれを防ごうとするが、なかなかうまくはいかなかった。
しかし俺は必死に走り続けた。この腕の中にある体温が失われないよう。
『ただ困らせてやりたかっただけだった。生意気なことを言う弟の、鼻を明かしてやりたかっただけだったんだ。』
俺はそんな言い訳を、心の中で何度も繰り返していた。
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作品名:Be Conscious その① 作家名:流光