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ケンカップルとサンドウィッチ!

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***


「オー、喧嘩、ヨクナイヨー、犬も食わずデ棒に当たるヨー?」
 ケンカップルで困った時のお約束。
 静雄と臨也を押さえつけたサイモンは、聞く耳など持っていない双方に向かって、道のど真ん中であることも気にせず、怪しい日本語で説得を試みていた。
「――というわけで、親友の大ピンチを救わんと、通りすがるキュートでグレイトな女の子たちの誘惑を振り払いながら只管に走る俺は、さながらメロスの如く!! 親友を助けるために我が命を打ち捨てる覚悟で露西亜寿司まで疾走したのであった! 待たせたな! 我が友セリヌンティウス!」。
「正臣、本当にありがとう・・・・・・!」
 えっへん! と胸をはる正臣に、帝人は心からの感謝を述べた。「よせやい、照れるじゃねーか」と笑う正臣。
 2人の友情が、更に深る良い話だった――で終わるかと思いきや、
「感謝ついでに、正臣のセリフを要約してあげるね。『サイモンさんを呼びに行った。』以上。あと、厳密に言えば間に合ってないよ」
 帝人は笑顔のまま、正臣のセリフをバッサリ斬り捨てた。
「お前な~! 人が折っっ角――!」
「えっと、で、でも、右手以外に怪我がなくて良かったですね」
 話題を転じるように、杏里が言葉を発した。
「あぁ。それに周りの被害も殆んどないしな」
 門田が頷きながら、辺りを見渡す。
「いや~、それにしてもあの2人、一応ちゃんと約束を果たしたっすねぇ」
「ふふぅ。愛のなせるわざかしらね~」
「狩沢さん・・・・・・、僕の方を見ながら言うの止めてください・・・・・・」
 帝人は狩沢のwktkした視線から逃れるように横を向いた。
 ――そう、臨也も静雄も怒らなかったのだ。帝人には。「には」。ここが重要。
 あの後、帝人が経緯をごくごくシンプルに――臨也と静雄がボーイズにラブでケンカップルだという話題があったのだと告げると、風前の灯かと思われた帝人の命は、しかし、2人の手が同時に帝人から放され、向こうに行っていろ、と門田たちがいる方へ追いやられたことで、あっさりと杞憂に変わった。
『よーするに、シズちゃんがこの世に存在しちゃってるから、帝人君におぞましくも馬鹿げた誤解を与えちゃうんだよねぇ?』
『ノミ蟲が存在する害悪が、こんなところにまで広がるとはなぁ・・・・・・。安心しろ、塵一つ残さずに捻り潰して、お前の誤解を晴らしてやるからよ』
 2人の言い分は、全くもって同じ。相手を抹殺すれば、帝人の疑惑(別に、帝人が疑っているわけではないという主張は聞き届けられなかった。)も晴れるし、気分もスッキリでニコニコ円満解決というわけだ。
 基本的に自分は手を出さない陰湿主義の臨也が、珍しくヤル気に満ち溢れたことで、その場はいつにも増して騒然となった。
 まさに、一触即発。
 今、まさに命をかけた闘いが――!
 ――というところで、サイモンが駆けつけたのだった。
「えっと・・・・・・、あの2人は結局、ケンカップルじゃない、んですよね?」
「まぁ、今だって嫌悪感丸出しだもんなぁ・・・・・・」
 杏里の言葉に正臣が、未だにお互いを悪し様に罵りあう二人を見ながら言った。
 どっちも、ツンデレなんだから☆ と笑ってすますには、あまりにも鬼気迫るものがある。全身から、冗談じゃねえ!! というオーラが出ていた。
 そんな2人に向かって、「お2人はカップルなんですね」宣言を果たした帝人が今現在も正臣たちと一緒にいるのは、奇跡――というよりも、ひとえに帝人だったからというのが主な理由だろう。親友に、安心安全の池袋ライフをエンジョイして欲しいと思う正臣としては、心中複雑だ。
「まったく・・・・・・。今回の原因は、お前にもあるんだからな。少しは反省しろ」
 門田にたしなめられ、「はーい」としょんぼり頷く狩沢。
「イザイザとシズちゃんが、ボーイズにラブってると思ったけど、実は違ったのね・・・・・・」
「お、ようやく現実を認めたんすねぇ」
「うん、ゆまっち! 私、ようやく分かったの!」
 しょんぼりしていた表情が、途端に明るくなる。
 そして、狩沢は帝人の手をガッシと掴んだ。目はギラギラ情熱に燃え(あるいは萌え)、今に、ヒャッハァ! とでも叫びそうな勢いだ。反省時間は1分と持たなかったらしい。
「三つど萌え! ラブ・トライアングル! サンドウィッチって美味しいよね!!」
 私としたことが、気づかなかったなんて! ニコニコ眩い笑顔を放つ狩沢に、帝人は本気でげんなりした。
「ん~。否定したいのは山々なんすけど、今回は、まぁ確かにそう見えなくもなかったっすかね・・・・・・? いや~、もし仮にそうなんだとしたら、どうやって、あの2人の恋愛フラグたてたんすかねぇ? しかも、同時攻略……! 竜ヶ峰君、すごいっす!」
 遊馬崎が、おそらく本人からすれば、最大ともいえる賛辞を述べた。帝人にしてみれば、全くもって嬉しくない。
「いや、だから、本当に誤解ですよ・・・・・・。僕の命が助かったのは、ただ単にあの2人がビックリしすぎて固まったせいもありますし。とにかく、偶然ですよ!」
 自分までボーイズにラブっちゃう仲間に入れられるのは不本意だ、と帝人は抵抗をする。
 しかし、狩沢達の誤解と邪推は留まるところを知らない。ちなみに、帝人にとって少々残酷な真実を言うのであれば、その誤解と邪推は殆ど間違っていない。正解だ。
「でも、本当に竜ヶ峰君はモテモテで、えっと・・・・・・、すごいと思います」
「――――!?」
 はにかんだような笑顔でおずおずとしながらも、率直な感想を述べる杏里の言葉は、帝人の機能を停止させるのに十分すぎる威力を持っていた。
「み、帝人・・・・・・? お~い、しっかりしろー?」
 正臣が同情するように、帝人の肩をポンと叩いた瞬間、帝人の体中から力が抜けた。ヘナヘナとしゃがみこみ、その場で「o」と「r」と「z」を組み合わせたような姿勢になる。
 目の前がグンニャリと歪む。・・・・・・大丈夫、まだ泣いてない。泣かない。だって、男の子だもん・・・・・・!
「ほ、本当に、誤解なんです~~!!!」
 夕陽も沈みきり、今度は店々の灯りで煌々とした明るさを放つ池袋はサンシャイン60通りに、帝人の悲痛な叫びが虚しく響き渡った。


end.