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僕たちは二人して叶わない恋をしている

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「一度終わらしてあげたらええのに」
「……なんを?」
 けれど姉は喋りたいだけ喋ってしまったと言わんばかりの顔でぷい、と僕から離れてしまった。口数の少ない姉が黙ると、もう暫くは言葉を望めない。
 僕は台本に蛍光ペンを挟んで閉じると、えらく不機嫌な姉をしげしげと観察する。
 えらく不機嫌、と形容したのは僕だけれど、外から見ているだけだと姉は別段変わりなく、多分いま誰かがこの控え室に入って来ても何の躊躇いも無く姉に声を掛けるだろう。
 なんだろう、雰囲気が、ちりちりとくすぶる感じ。姉の不機嫌は僕にたやすく伝染する。部屋の空気が全部微炭酸になって、僕は息をするたびに舌先を軽く苛められている。
 終わらしてあげたらええのに?
 あげる、というからには、自分のことではないだろう。それに僕は姉と、水と水みたいな関係の、本当にごく近くに認識されているから、これは僕のことでもないんだろう。
 姉はこだわりの多い女の子だ。多すぎて、こだわるどれもこれも大切で、結局一番は何? と言われたら間髪いれずに飛び出す答えが日替わりになったりする。
 でもここ最近の姉の、多分一番のこだわりはあのふたりだ。
「おねえちゃ」
「しぃちゃん、後で」
「……わかった」
 恨めしいくらい抜群のタイミングでメイクさんの近づく足音がしたので、僕も姉も黙った。メイクさんはやっぱり何の躊躇いも無く「峰塚さんおはようございますー」とドアを開けるなり姉に声を掛けた。空気の中の微炭酸ははじけて消えた。