GUNSLINGER BOYⅡ
義体の数はまだまだ実験段階でしかもコストもかかるということでそう多くはない。
臨也が作戦2課に配属され担当官を志望している所に丁度新しい義体が出来上がったのは偶然だった。
何ヶ月かは待つだろうと予想していた臨也は「やっぱり日頃の行いがいいからだよね」と
得意気に言った。
やっと縁が切れたと思っていた臨也がなぜか同じ作戦2課に配属されてきたことに脱力し
ていた新羅は臨也の発言にツッコミを入れる気にもなれず、とりあえず義体についての資
料を渡した。
「まだその子の担当になるかは決まってないよ。これから何回か面接して適性検査も受け
てもらうことになるから」
フラテッロには相性が必要だ。
いくら条件付けをすると言っても最初から義体と担当官の反りが合わないとなかなか上手
くいきにくい。
「ま、要は君が彼を気に入るかどうかだよ」
「ふーん。気に入らなかったら?」
「また次の義体が出来るか、それか他の義体の担当官が殉職したらそっちに回されるかもね」
使い回しよりは新しい方がいいなぁ・・と呟く臨也にやはり若干の不安を覚える新羅だっ
た。やはり、あの子には以前の記憶は無いといっても優しくしてやって欲しい。
白い窓もない部屋に入ると向き合った一対の椅子の片方に小柄な少年が座っていた。
(へえ、見た目はホント普通の人間と変わらないんだな)
体の8割が人工物だとは思えないほど目の前の少年は普通だった。
12才と聞いているが、大きな目のせいか剥き出しの額のせいか、それよりも幼く見える。
特に目立った特徴の無い顔立ちだが、特徴が無いということは裏を返せば欠点も無いとい
うことで、よく見ればなかなか整っていて愛らしい。
とても公社の人間たちが言うような〈殺戮人形(キラー・ドール)〉には見えない。
じっくりと全身を観察していると、少年はおずおずと言った。
「あ、あの・・・」
「何?」
「あなたは、〈外〉のひとなんですよね?」
「外?組織の人間って意味では〈外の人〉ではないけど」
「いえ、僕、今まで技術部の人何人かとしか話したことなくて・・・」
澄んだ青い瞳が貪欲な好奇心と知性を宿して臨也を見つめる。思わずゾクリとした。
直感的に、この子は同類だと思った。
臨也が少年を観察していたのと同じく・・少年も臨也を観察していたのだ。
「あの、何でもいいです。お話、してくれませんか?」
くくっと臨也は肩を震わせて笑った。止まらない。
何が人形だ。人形に、こんな目ができるわけないじゃないか。
なんで笑われているのか分からず、少年は戸惑ったように首をかしげる。
「君、名前は?」
「名前は・・僕の担当官になった人が、つけてくれることになってます」
「そっか。じゃあ、いいの考えてあげないとね」
「え?」
「俺が、君に知りたいこと全部教えてあげる」
君の担当官は今日から俺だよ。
そう言うと、少年は一瞬驚いたような表情をした後、嬉しそうに微笑んだ。
「新羅、俺、あの子に決めたから」
面接室から出るなり確定事項のようにいう友人。
「はい? まだ第一面接しかしてないし適性検査もあるし、大体あんな短時間の面接で決めていいのかい?」
「決めたものは決めたの。あの子の担当官は俺だから。上にもそう言っておいて。」
「え、だからまだ決めるわけに・・」
「さ~て、名前考えなきゃだね。辞書持ってこないと」
この状態になった臨也が他人の言葉など聞くはずがないことは長年の付き合いでわかっていた。
つづく。
作品名:GUNSLINGER BOYⅡ 作家名:net