二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ありえねぇ !! 4話目 前編

INDEX|7ページ/9ページ|

次のページ前のページ
 

しかも今自分に話しかけてきた先頭の男は、見覚えがある。
年齢はとっくに二十歳を超え、下手したら静雄より年上なのだろう。ストライプ柄のスーツをだらしなく着崩し、似合っていないオールバックは金髪に染まっている。

高校生や中学生が多いカラーギャング【黄巾賊】のメンバーで、異様に高齢なので覚えていたのだろう。
先日の切り裂き魔事件の際、夜街に四人で徒党を組み、自分に難癖をつけてきたので、威勢良く顔面にパンチをくれてやり、宙に吹っ飛ばした男だ。
ダラーズ狩りにかこつけ、前回ぶちのめされたお礼参りに来たのがバレバレだ。
静雄は溜息をつきながら、吸っていたタバコを地面に捨て、かけていたサングラスをポケットに仕舞った。

「だから何だっつーんだ? 俺が【ダラーズ】で悪ぃか? 俺は今絶好調で機嫌が悪いし、てめぇらに付き合う時間は、俺の人生に置いて、後一分程度しか残ってねぇ。悪い事いわねぇから、とっとと消えろ」
「は、いきがるなよ静雄。【ダラーズ】はもうお終いなんだよ。なんせ俺達が、お前らの創始者の首を取ったんだからな。池袋はもう、【黄巾賊】のもんだ!!」


一斉に弾けるように笑った三十人を前に、静雄は悠々と真横に立っていた【駐車禁止】の丸い標識を、片手でへし折り振り上げた。

ぶんっと風を切る重い音に、彼らの笑い声が一瞬で掻き消えるが、逆に静雄の血は沸々と滾っていく。

「何か今、聞き捨てならねぇ事抜かしてくれやがったみてぇだよな?」 

【ダラーズ】のトップに【創始者】と呼ばれる男がいるのは知っていたが、そいつの名前はチーム内でも誰も知らない。勿論静雄もだ。
興味が無いと言えば嘘になるが、今まで気にした事も殆どなかった。
けれど、一応自分が所属するチームの頭だ。
それをやられたと聞いて、面白い筈もない。
 
「誰が誰を取ったって? しっかり吐いて貰うからなぁぁぁぁぁ!! 逃げんじゃねぇぇぇぇぇ!!」

咆哮と同時に、振り上げた標識をまるでバットのようにフルスイングすれば、長い柄に薙ぎ払われ、一瞬で十数人が宙を舞う。
自分に舐めた口を利きやがった野郎は今、怯え、腰を抜かしてへたり込んでいる。
静雄は冷静にそいつだけを残し、残りを黙々と地に沈めていった。


だが。

その最後に残した馬鹿男に顔面パンチをくれてやり、胸倉を掴んで聞き出した名前に、静雄の目は点になった。

「…………俺の耳、おかしくなっちまったのかな? お前、もういっぺん言ってくんねぇ?…………」
「……だから、『竜ヶ峰帝人』っていう、来良の一年坊主です……」


ミカドの名に、また肩の力がかくりと抜ける。
脱力感に崩れ落ちそうになる足を踏ん張り、静雄は大きく溜息をついた。
(あんなベソかきが、カラーギャングのリーダーって?)


「お前らさぁ、一体何処でそんなガセネタ掴んだ? マジありえねぇだろうが。勘違いも甚だしい」
けれど再び、男の胸倉を勢い良く引っ張りなおす。


「何処の誰の戯言かしらねぇけどよ~、そんな事はもう俺にはどうでもいいわ。うん、どうでもいい。ただ、竜ヶ峰を始末したって事は聞き捨てならねぇ。っつー事はさ……、お前らが竜ヶ峰をダンプカーに突き飛ばして轢かせたって事になるよな? あいつ、俺にとって、特別仲が良い友人なんだわ」

もう一発、軽めに顔面に拳を打ち込む。

「やっぱさ……、俺の友達に手を出したんだ。しかも全くカラーギャングと関係ねー奴をさ。ただの高校一年坊主を…………、轢かせるなんてよぉ……、それって絶対許せねぇよな? なぁ!!」

ボグリ
ボグリ
ボグリ
ボグリ

(軽めに殴っているのに、なんでこんなに沢山血が出るんだろう?)
(ああ、鼻も折れやがった。まあいいか、死なねーし)
(ミカド……、ミカド……、うん、やっぱすげえ威力だ)
(この三文字の呪文を頭で唱えるだけで、俺、全然キレてねぇし。ミカド…、ミカドミカドぉ……)


「誰? 命令した奴? お前ら雑魚じゃ話になんねーし。とっとと名前を吐いてくんねぇ? 俺、暴力嫌いだしさ。俺に使わせないでくれよ、なぁ? 誰が俺のミカドをやれって命じたんだ?」

「命令したのは法螺田さんです!! 黄巾賊の新将軍です!! だから、その人はもう勘弁してやってください!!」

背後から、悲鳴混じりの大声が耳に届く。
見れば、さっき標識でフルスイングしてぶっ倒した内の誰かが、震え混じりでこちらに駆け寄ってくる。
 
静雄は脳内に『法螺田』の名前を刻み付けると、いらなくなった男を、そいつめがけてポイッと放り投げた。


「今から十秒以内に消えろ」


わらわらと、蜘蛛の子を散らすように立ち去る黄巾賊の集団と入れ違いに、遠くで観戦していた新羅が駆け寄ってくる。

「怪我は?」
「ある訳ねーだろ」

イラッときた心を静める為に、もう一本タバコを口に咥える。


「新羅、竜ヶ峰の体、おめぇんとこに移せるか?」
「え、急にどうしたの?」
「黄巾賊の奴ら、竜ヶ峰がダラーズの創始者だって、勘違いして狙ってやがる。今回のダンプ事故も、故意に突き飛ばしたんだとよ。黄巾賊将軍、『法螺田』の命令で。
カラーギャングの闘争に巻き込まれての今回の昏睡なら、帝人の身体、やばいだろ?」

それを聞いた途端、何故か新羅が、しょっぱい顔になる。

「……あー、どっから漏れた? 臨也かな? それとも……、きっと矢霧波江だ、かなり恨んでる筈だし……。じゃあセルティの勘はドンピシャだったって事で……、んー、流石私の愛しい人だ♪……」
「ああ? 何をごちゃごちゃと」
「静雄、それガセじゃないから。ミカド君が創始者なのは本当の事だよ。いや~、今日日の高校生は、凄いこと考えるよね。嫌、設立したのって、彼が中学の時になるのか……、どっちにしても凄い子だよね、ミカド君って♪」

折角口に咥えた新しいタバコが、火をつける前に口からこぼれて落ちる。
開いた口が塞がらないって、多分こういう時になるんだ。

あの泣き虫が?
あのほえほえがだぞ?
しかも中学生の時って、まだ田舎で暮らしてた頃だろが?
それが何で、池袋でカラーギャング作ってんだよ?


人間、信じられない事を知った瞬間、思考回路が遮断され、所謂フリーズ現象を起こすというが、池袋最強の男も例外ではなかった。



「おーい静雄? ねぇ大丈夫なの君?」
「ありえねぇだろうがよぉぉぉぉぉぉ!!」



★☆★☆★