潜熱のゴールデンサンズ
クラウドは聞きたくなかったが、当のセフィロスは勝手に語り始める。
「海を望む、落ち着いた一軒家。ゆたかな芝生に覆われた庭で金色のチョコボを飼い」
ちなみにコスタ・デル・ソルのような観光地でなく、僻地が理想だと注釈がついた。
「ターコイズブルーの水辺でイルカと戯れ、ともに泳ぎ、ときには剣を交えて戦い」
「戦うなよ。動物虐待するなよ。ていうかイルカは剣を持てないよ」
思わずツッコミを入れてしまいクラウドは慌てて自らの口を塞いだが、撤回する暇もなくザックスが同感の意を示す。
「せめてイルカじゃなくイカにしとけ。そしたら剣も持てるだろ」
「ふむ、良案だ。リミット技も決まりだな。その名も 『十刀一閃』」
バッカじゃねーのと笑うザックスとは対照的に、クラウドはがっくりと肩を落とす。
……ああもう、夢が壊れる。
「つーか話は戻るんだけど」
いい加減にサインくれ、とザックスは当初の目的を突きつけた。
「あんたもさ、もし早く上がれたら来いよ。待ってるから」
どうだかなと返したセフィロスは左手にペンをとり、
「確約はできんが、気には留めておこう」
二枚の用紙それぞれに承認済のサインを入れてくれた。
作品名:潜熱のゴールデンサンズ 作家名:ひより